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この人に聞く IPv6

2004年、いよいよIPv6ネットワークのビジネスが動き始めようとしています。 どんなビジネスが展開されようとしているのか、また、それは人々や企業、社会にとってどんな意味を持っているのか。 WIDEプロジェクトにあっては日本のインターネット界をリードし、またIPv6の世界標準規格である IPv6 Ready Logo の策定に議長として尽力されている、 次世代インターネットの研究者・江崎 浩氏にお話を伺いました。 |

IPv6 Ready Logo 委員会
議長・江崎 浩氏 |

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2003年、IPv6 Readyロゴ・プログラムがスタートし、初の認定製品も登場しました。このプログラムにはどんな意味が込められているのか、創設者のお一人としてお聞かせいただけますか? |
江崎氏 |
ロゴ・プログラムは、IPv6が研究開発のフェーズからいよいよビジネスのフェーズに入ったことを象徴する活動だというふうに考えています。ビジネスフェーズに入って、製品がどんどん出てくるというときに、ユーザーが安心して使える、問題なくつながるというのは非常に重要なことです。たとえば、買ってきた電話機がつながらない、品質が悪くて聞こえないなんて、許されることではありませんよね。それと同じように、インターネットで使われるものは、最初から他とつながらなければいけませんし、きちんとした品質を持ったものであるということが担保される必要がある。ロゴというのは、その基準なんですね。ですから、ロゴをとるということが重要なのではなく、この基準を守って企業が製品をつくり、そうした製品だけを市場に出回らせるということに意味があるのだと思います。 |
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ロゴ・プログラムの今後の展開を教えてください。 |
江崎氏 |
現在、フェーズ2の策定を進めています。フェーズ1は、最小限IPv6で動くかどうかを認証するものですが、フェーズ2は、たとえば、セキュリティや安定性など、生活や産業活動の基盤としてインターネットを利用した場合に、そこで十分使えるものかどうかを評価するものです。フェーズ2はたぶん、2004年5月頃に仕様が固まって、7月か8月くらいにプログラムがスタートできるだろうと考えています。そうなると、いまインターネットで使われているのと同等、あるいはそれ以上のクオリティの製品がいよいよ市場に出てくるということになります。 |

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ビジネスが本格的に動き出すということですね。ところで、IPv6では日本が先行していると思っていたのですが、外国勢の追い上げが厳しくて、うかうかしてはいられない状況だそうですね。 |
江崎氏 |
はい。インターネットのいわゆる心臓部といわれる交換システムの領域では日本が優っていた時期もありましたが、今ではアメリカの大手企業が日本と同レベルか、むしろ優れた製品を出し始めました。コンピュータのOSにしても、WindowsやLinuxはすでにIPv6化が終わっています。さらに、中国の企業もIPv6の製品をつくり出そうとしています。中国といえば当然、家電からネットワーク製品まで幅広くものづくりをしますから、大変な競争相手になるということです。 この背景には、一つにはアメリカの国防総省がIPv6化を決定した( 1)ことがあります。国防総省のマーケットはものすごく大きいですから、アメリカの企業が本格的にそちらに重心をかけだした。それに引きずられて、台湾やインドの企業もIPv6に重点を移しているというわけです。 一方、中国には通信の自由化という、また別の刺激が働いています。中国はいま、ネットワークそのものを全部新しくつくり変えている。もうIPv4のアドレスはないので、IPv6でいくしかないと腹をくくったわけです( 2)。中国の富裕層というのは日本の人口の倍くらいいますから、巨大なマーケットになるんですね。 これに対して、日本はそういう大きな目玉を見い出せていません。けれども、何も悲観的になることはなくて、外国から見ると、日本のマーケットは非常にうまくいっているように見えているんです。IPv6対応の製品が数多く出てきていますし、運用実験もたくさん行っている。グローバルに展開するための経験や技術は蓄積できているので、そういう意味では悪くない状況だといえます。ポテンシャルとしても日本のマーケットは強いわけですから、心配しなくても自然にv6になっていく。つまり、知らないうちにIPv6を使っているというふうに、たぶんなるのではと思います。 |

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具体的には、どんなビジネス展開が考えられますか? |
江崎氏 |
これからのインターネット利用については、いくつかの方向性が見えてきています。一つは、情報交換の方向です。インターネットは、VoIPという技術を使って電話もできるし、映像も送れる。インターネットから情報を取るのではなく、個人個人が情報を交換していくという使われ方が考えられます。 もう一つは、セーブマネーの方向です。インターネットを使ってお金をゲットするのではなく、お金をセーブする。企業なり産業活動の効率化を実現するのです。その方向として、たとえば、ビルディング・オートメーションがあります。これは、ビル全体を大きなコンピュータシステムとして扱い、照明や空調、セキュリティを総合的に管理することによって、ランニングコストを低く抑えようというものですが、ある実験によると、ビルの運営費が毎月30%も削れるという結果も出ています。30%というと、20年もするともう1棟ビルが建つという試算もあるそうです。こうなると、ものすごい価値が生まれますよね。おまけに省エネですから、地球にも優しく、環境問題にも貢献できるわけです。 流通を効率化する、いわゆるサプライ・チェーン・マネジメントもこの方向です。今まで非効率に行われてきた流通段階の商品管理を、インターネットをうまく使うことによって、人員や倉庫面積を削減したり、顧客のニーズにあったものを必要な数だけつくるといったこともできるのではないか。実際、そういうことに取り組んでいるところもたくさんありますよね。 |
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私生活の面でも何かありますか? |
江崎氏 |
個人でいえば、医療やヘルスケアの分野があります。医療現場の効率化──医薬品管理や遠隔治療もそうですが、自分自身の健康管理をどう行うかという予防医療へのインターネット利用が増えていくと思います。たとえば、時計に血圧計を組み込んでネットワークで管理するとか、万歩計もつないで運動量を計測するとか、さらには食事のメニューも連動させて食べ過ぎを防ぐとか。これも実はセーブマネーなんですね、病気をしなければ治療にかかる費用もいらないわけですから。トータルな社会システムとして、不要なお金はセーブしましょうという考え方ですね。 そのほか、インターネットで快適さや安全性をつくり出すという方向もあります。たとえば、車や列車をコンピュータ化してネットワークすれば、渋滞をコントロールできたり、事故が起きないようにできたりするでしょう。あるいは、従来監視に使うものだと思われていたカメラをネットワークにつなげば、まったく違う使い方が可能になります。たとえば、遠隔地の天気を調べたり、外から自宅の様子を確認したり、快適に生活するためのセンサとしての役目も果たすわけです。 実は、私もカメラをつないで使っているんですよ。仕事柄、出張が多いので、家族とのコミュニケーションはどうしてもインターネットになります。そうするとやっぱり家族の顔も見たくなって、Webカメラを部屋に置いておくことにしたんです。カメラは私のほうからコントロールできますから、家族が机のところに来てメールを打てば、その様子が見て取れるというわけです。私は私で自分の画像を家族に送ります。こうすることで、非常に緊密で快適なコミュニケーションができるようになりましたよ。 |

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IPv6で何ができるのかと難しく考えるのではなくて、個人や企業、社会がどうしたいのか、あるいはどうなりたいのかといったところにビジネスのヒントがあるのかもしれませんね。 |
江崎氏 |
そうですね。これまで、どちらかというとネットワークが中心にあって、その回りに使う人がいるというふうに思いがちでしたが、そうじゃなくて、人が真ん中にいる。その回りに人をサポートするようなインフラができてくると考えたほうがいいんじゃないでしょうか。ちょうど、真ん中にいる人の目や耳や口や鼻や手といった感覚が、そのインフラを通して伸びていくという感じです。そして、さまざまな情報を探り当てて必要なものだけを取捨選択し、生活を快適に、あるいは産業活動を効率化するために使う。そのことによって、社会全体が豊かになっていくというところに、ネットワークの本当の意味があるのだと思います。 |
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ではいま、ビジネス展開をする企業、あるいは日本に求められることは何なのでしょうか? |
江崎氏 |
やはり、きちんとした技術を持っておく。そのうえで、既成概念にとらわれないようなものづくりをするということじゃないでしょうか。とがった商品、他とは違う技術を持っていると、そこに人は寄ってくるものです。そうすると、新しい使い方が出てくる。考えてもいなかったようなお客さまが来てビジネスのヒントをくれる場合もあります。あるいはまた、その商品や技術を使って新しい商売をしたいと考えるビジネスパートナーが現れるかもしれません。 そのとき大事なのは、ユーザーやビジネスパートナーのリクエストにどう応えていくかです。ときには、過酷な状況で使いたいとか、まったく想定していなかったような使い方をしたいとか、難しい要求が出てくるかもしれません。それでも、お客さまが欲しいと思うものをつくっていく。そうすることで、新しいマーケットが広がっていくのだと思います。 |
1 米国・国防総省のIPv6化
- 2003年6月、米国・国防総省は、IPv4ネットワーク機器の調達を2003年秋で終了し、2008年までに完全に IPv6ネットワークに移行することを発表しました。国防総省は、IT予算が年間300億ドルを超えるという世界最大の ITユーザーであり、この発表によって巨大なマーケットが動き出したということができます。
2 IPv6ネットワーク構築を進める中国
- 2003年11月、中国はCNGIと呼ばれる次世代インターネット計画を明らかにしました。計画では、総額14億元(約200億円)をかけて2005年までに中国の主要都市を結ぶIPv6商用バックボーン・ネットワークを構築し、2006年には世界最大のIPv6商用ネットワークを実現するとしています。
- IPv6 Ready Logoプログラムのサイト(新しいウィンドウが開きます)
- http://www.ipv6ready.org/
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