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この人に聞く IPv6

世界最先端のIT国家を目指すという「e-Japan戦略(新しいウィンドウが開きます)」が打ち出されて4年。2005年は、この戦略でうたわれている「5年以内にすべての国民の誰もが、いつでもどこでも、自分の望む情報を安全・迅速・簡単にやりとりできるインターネット環境を実現する」という年にあたります。2005年に果たしてそれが現実のものとなるのでしょうか。また、その環境実現に不可欠といわれるIPv6の普及は、どこまで進むのでしょうか。e-Japanという国家戦略実現に向けて、官民の力の結集に大きな役割を果たしているIPv6普及・高度化推進協議会事務局の中村秀治氏にお話をうかがいました。
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IPv6普及・高度化推進協議会事務局 中村 秀治氏 |

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日本の現状を理解するための比較材料として、まず、海外のIPv6の進捗状況をお話しいただけますか? |
中村氏 |
ご存知のように、米国の国防総省(DoD)がIPv6への移行を宣言して、それが大きなインパクトになっているわけですが、この宣言の背景には、やはりテロ問題があると思うんです。インターネットの技術はDoDが開発して広がっていったものなのに、インターネットを縦横無尽に使って連絡を取り合っていたテロリストたちを追いかけ切れなかった。そういう反省があるんじゃないでしょうか。 IPv4は、NATに隠れてしまうなどということが簡単にできてしまう程度の技術でしかなかった。IPv6に移行するときには、そういうことができないようにしようというのが一つ。もう一つは、DoDとしては一般に広がる技術よりも常に少し先を行って、すべてを見渡せる状態にしておこうと、そんな志向があるんだと思います。 12月初めに行われたIPv6北米サミットは、ネットワークを使用した軍事目的のプレゼンがかなり多くなってきたようです。テロリストより先んじた技術で世界の平和を目指す構想だといえるのでしょう。 |
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民生用のニーズはどうなのでしょうか? |
中村氏 |
あまり高くはありません。というのも、米国はIPv4のアドレスをたくさん持っているので、危機感がないんです。DoDがIPv6をやるというので、まずそのための研究開発をして、その成果を中国に売ろうというのが、米国企業の考えるパターンです。 中国はIPv4アドレスがないですから、最初からIPv6志向です。IPv6の国家基幹網を整備し始めていて、2004年12月の時点で主要都市にはすべて敷設されています。中国では電話が未整備ということもあって、無線のVoIPを中国独自の「VoWLAN」という規格で検討中ですが、IPv6ネットワークはそのバックボーンとしての意味合いもあるようですね。 中国は国家政策として強力にIPv6を進めていて、競争活力をうまく引き出しています。最初は海外のコピーだったサービスやルーターなども、今では自前でつくるまでになっています。中国には、100万人以上の都市に住んでいる人だけでも4億人いるんです。少なくともこの4億人は、世界のスタンダードな生活水準になる可能性がある。EUが今回拡大されて4億人、北米大陸が米国とカナダを合わせて3億人ですから、中国の市場は質的にも非常に大きいといえますね。 ヨーロッパも急速に中国に接近しています。携帯電話にしても欧米系企業も戦略的にやっていますし、中国のIPv6バックボーンも、ヨーロッパの技術がかなり入っているのではないでしょうか。 |
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ヨーロッパでのIPv6の現状はどうですか? |
中村氏 |
まだ全然ですね。ヨーロッパというのは通信とか放送は国家事業なので、ISPなどインターネットの民間サービスはずっと遅れているんです。では、何でインターネットをやっているかというと、ホットスポットという公衆無線LANが普及しています。インターネットカフェも、日本より一般的です。ただ、まだIPv4のサービスなので、IPv6になればもっと広がっていくと思います。 今、米国でも流行っている無線LANでVoIPを行う「プッシュトーク」なんかも入り始めているようです。ボタンを押してしゃべるとトランシーバーのように通話ができるんです。公衆網を使って海外と通話する場合はお金がかかりますが、インターネットを使っている限りはタダなので、かなりの勢いで普及しています。 |

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さて日本ですが、IPv6を国家政策として進めている海外に比べて、日本は遅れをとったという感じもしますが。 |
中村氏 |
確かにそうですね。ただ、日本も本当は国家政策としてやっているんです。e-Japan戦略をつくったときに、インターネット基盤は国が引くという話もありましたが、経済界の反対で民間主導になってしまった。それで、国は競争環境の整備や研究開発にお金を投入しましょうということになったんです。研究開発はどうでも良くて、その技術が使えて商売になればどんどんお金を出すという中国などと比べれば、国家政策といっても中身が全然違うわけですね。 |
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そんな状態でe-Japan戦略の、2005年までに全国民が使えるIPv6のインターネット環境を整備するという目標は達成できるのでしょうか? |
中村氏 |
今でも、トンネル技術でIPv6は使えますが、IPv6を使って留守宅をチェックするなどということは、まだ不十分です。ISPがもっと積極的にIPv6を通すということにならないと、末端ユーザーは自由に利用できるようにならない。そこが難しいところで、インターネット業界として何で儲けるかというサービスモデルが、まだ見えていないということがありますね。IPv6を使えるから、プラス1,000円くださいというのはNGで、インターネット上のサービスを華やかにして、その付加価値の高いサービスに対して手数料払うという仕組みになるべきなんです。 そのためには、よく卵と鶏の議論がなされますが、やっぱり卵が先ですよ。インフラが先なのはもう明らかなんです。安価に利用できるIPv6のインフラがありさえすれば、その上に乗るサービスはいくらでも出てくるはずです。日本としてはそこに舵を取るべきだと考えています。 |
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国がIPv6のインフラを整備すべきだと? |
中村氏 |
そうです。すでに敷設されている光ファイバーをつないでいくだけでいいので、それほどお金もかかりません。明治時代に、民間が引いた鉄道を国が買い上げて国鉄としたように、インターネットもいったん国に渡して、それを結んでインフラにすればいいわけです。もちろん、国鉄のようにならないためのうまい仕組みは必要ですから、ここには知恵をしぼらなければいけません。その上で、利用者からは少額の利用税を徴収して、それをまたインターネットの基盤整備に使っていくというふうになればと思っています。 |

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IPv6インターネットの社会インフラができたとして、どんなことが実現されるのでしょうか? |
中村氏 |
たとえば北海道の西興部(にしおこっぺ)村のように、一部の自治体ではすでに光ファイバーを全世帯に引いたところがあります。自治体は国と違って、各省庁が出している縦割りの支援事業をプールして使うということができますから、インフラ整備も工夫できてしまうわけです。そうすると、その上に見守り系のサービスなどいろんなサービスが乗ってくると思うんです。 具体的には、地方でIPv6サミットを開催すると、過疎地に残されている独居老人から「見守ってほしい」という要望をよく耳にします。インターネットだかなんだか知らないけれど、向こう側に誰かいるという気配がするだけでもいいというんです。IPv6だと、地元のISPが福祉施設や家族と一体となった見守りシステムとして、高齢者の様子をカメラで見守り、定期的に家族につなぐというサービスができるわけですね。高齢者にもプライバシーがありますので、セキュリティがしっかりと確保され安心を与えるこのシステムの需要は急増しています。この“見守る”=“モニタリングをする”というシステムは、あるいは、公共施設の管理の効率化も可能です。今、町村合併で自治体では管理する公共施設の数が増えています。その公共施設をIPv6ネットワークで結んでこまめに照明や空調を管理すれば、無駄な電力を使わず、それだけで電気代が3割節約できるという実績も上がっているようです。 それからVoIP、中でも無線LANを使ったVoIPが注目です。中国が無線LANと同じような形式で電話を始めると、日本にも無線LANのVoIPを使った携帯電話が出回るでしょう。ADSLを1本引いて無線LANの基地局を立てればいいわけですから、あっという間に普及すると思います。これなら、プロの人が基地局をつくらなくても、地域の人たちの基地局をつないでいけば、街中どこでもIP電話がかけられるようになります。まだ実験段階ですが、こうした公衆無線インターネットサービスは、すでに京都の「みあこネット(新しいウィンドウが開きます)」で提供中です。 |
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無線LANが普及すると、携帯電話が要らなくなるのでは? |
中村氏 |
少なくとも、通話時間やパケット量でお金をとるというのは難しくなるでしょうね。FOMAの決済機能など携帯電話ならではの強みを生かしたサービスで手数料を得るということになると思います。利用方法としては、回線の使い分けが進むでしょう。VoIPというのはインターネットですから、情報を見たりダウンロードしたりといったセキュリティをあまり気にしないときに使う。一方、お金を払うといった重要なときは安全なFOMA網を使うという具合です。 IPv6だと、こういう使い分けもやりやすいんです。FOMA網をIPv6にすると、電話番号と同じようにIPアドレスで固有に判別できるようになります。同じアドレスを使いながら、インターネットとFOMA網の使い分けができる。あるいは、複数のIPアドレスを持たせて使い分けるということも可能になります。 家庭でもIPv6になると複数のアドレスを持つことができるので、たとえばWebなど寸断されてもいいサービスと確実・安心が求められる医療系サービスを分けて使うことができる。アドレスがふんだんにあることで、プライベートなネットワークをいくつもつくることができるわけですね。 |

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そうなってはじめてユビキタス社会が実現するわけですね。では、10年後のユビキタス社会というのは、どんな社会なのでしょうか。 |
中村氏 |
団塊の世代の人たちが一つの鍵を握っていると思うんです。彼らもあと2〜3年で現役を離れて、10年も経つと高齢者になります。彼らが高齢者になったときには、インターネットをもっと使いこなしているでしょうし、今とがらっと変わっていると思いますよ。ユビキタスも、高齢者の人たちが遊べるためのサービスというテーマで開発されるんじゃないでしょうか。 たとえば、どこかに旅行に行くとします。旅先でレンタカーを借りると、それはネットワークでつながっていて、運転席に座った途端、操作パネルや計器類がその人が普段使っている色に変わったり、事前にこれまでの旅の体験や興味のあることを記憶してくれていて、乗った瞬間NAVIに行き先が表示されたり。そんなサービスがネットワークから提供されると、煩わしい段取りに気を使わなくて良くなって旅の楽しみも深まりますよね。あるいは、ホテルに着いたら、テレビにいつもの見慣れた画面を呼び出してオンライン株取引の株価をチェックできたり。PCを持ち歩かなくても、それがリモコンや携帯電話のような端末でできてしまうのです。 |
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ユビキタスというのは、もしかしたら自分なりの環境を持ち歩く世界かもしれないですね。 |
中村氏 |
まさしくそうです。そのほうが、お金を出してでも使いたくなるじゃないですか。どこでもネットワークが使えるという程度では、もう満足されないと思いますよ。旅行をして感動するとか、誰かと会ってコミュニケーションを深めるとか、そういう楽しみ方を支えるネットワークが、IPv6とIPv6で実現するユビキタスということなんですね。 |
- IPv6 普及・高度化推進協議会(新しいウィンドウが開きます)
- http://www.v6pc.jp/
- e-Japan戦略(新しいウィンドウが開きます)
- http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/
- みあこネット(新しいウィンドウが開きます)
- http://www.miako.net/
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