HD制作マネージメントサービス[HDm.]
(デジタルエッグ+ピクト)


 デジタルエッグは、ピクトの撮影・照明センターと協力して、HDシューティングをメインに、撮影から仕上げまでの制作工程をマネジメントする[HDm.](エイチ・ディー・エム)を立ち上げ、2004年夏から営業を開始した。「新日本製薬/極選上海康茶」「花王/ビオレU」「グリーンハウス/レモンの青汁」などのTVCMのほか、Webムービー「コニカミノルタホールディングス/ディマージュX50」(企画制作:電通IC局+シースリーフィルム)などで実績をあげるなど、好調に推移している。
撮影・照明の専門チームとポストプロダクションという技術のプロフェッショナル同士が綿密な連携を図り、互いのリソースを活かすことで、CM制作におけるHD撮影から編集、MAまでをシームレスにサポートし、スムーズな制作環境を制作プロダクションに向け提供する。[HDm.]では、デジタルエッグが営業窓口となり、撮影および編集の技術スタッフが企画の初期段階から参加、制作プラン構築および撮影機材、編集システムの提案から、HD撮影、編集、MA、納品に至る全行程のテクニカルサポートを行う。

 西邦夫氏(デジタルエッグ/取締役営業部部長):CM制作においてHD収録は増えていますが、現状はSD仕上げが主流。こういった状況にはそれなりの考えをもって臨むべきだと捉えています。
HD収録→HD仕上げに比べ、SD仕上げではダウンコンバートやカラーコレクションをどのタイミングで行うのか、といったようにワークフローが多岐にわたっています。またHD撮影、特にダウンコンバートが伴うケースにおいては、ディレクターやカメラマンが現場で目指したトーンやルックが、そのままポストプロダクションまで意図通り反映されているかどうかが重要。従来からのフィルム撮影では、テレシネ作業で制作者が自分たちの意図したトーンをつかみ、次のポストプロダクション工程に伝える役割を担っていました。しかし、HD撮影ではそのテレシネ作業がないため、撮影現場の意図がポストプロダクションに伝わりにくいケースも少なくない。だからこそ、ピクトとデジタルエッグが協力することにより、HD撮影においてもいわばフィルム撮影のようにクリエイティブの
狙いを完パケにまで反映できるようなサポート体制を構築しました。制作会社の方々にとって最終形が見えやすいワークフローを提示していきたいですね。

 小田茂博氏(ピクト撮影・照明センター/撮影部次長):撮影からポストプロダクションに至るまでは、様々な手続きや、伝達事項があり、制作会社が頭を悩ますところ。その連絡系統を一本化しフォローできれば、クリエイティブな面に時間を費やすことができ、作品のクオリティアップにもつながるのでは。
技術者同士がコミュニケーションを密にすることで、意思の伝達がスムーズになり、撮影現場での狙いや意図が、より編集作業に反映されるようになります。例えばカメラマンやVEが求める色調整や合成などについて、ポストプロダクションでより深く理解し、的確に作業することができる。また撮影・照明スタッフとエディターが双方の撮影・作業を知ることで、クオリティの高い映像表現が生まれてくるのではないでしょうか。
西氏:技術的なアドバイスにしろ、何かトラブルが起こったときのフォローにしろ、最終的に大事なのは機材やシステムではなく、人とのつながりだと考えています。生身の人間がきちっとコミュニケーションすることによって、あらゆることに的確かつスムーズに対応していくことができる。そのために大切にしているのは、[HDm.]に携わるスタッフそれぞれの「顔」を見えるようにすること。それが、このマネジメントシステムを利用して下さる制作会社の方々にとって、何よりの安心感につながると思っています。
[HDm.]では「人」と「コミュニケーション」を重視しています。その一つの例が[HDm.]のロゴマーク。HDm.は「unit for High Definition Television Shooting and editing management」の略なんですが、「HD」に比べて「m」の方が文字が太い。これは、機材やHD規格を、人とのコミュニケーションによっていかに管理していくか、いかに一番いいカタチにしていくか、という“マネジメント”が一番大事だということを表しています。

 デジタルエッグは2004年8月、「HDm.」を含めたHD制作環境を強化するのを狙いとしてクォンテル社のノンリニア編集システム「iQce(アイス)」を導入した編集室を2室開設した。iQceはあらゆるHDフォーマットからSDまでの出力が可能なほか、複数解像度の混在、CM制作において 需要が高いVARICAMの収録素材をフレームレートコンバーターを介さずダイレクトに扱えることなどの特徴を持つ。

 西氏:現状のCM制作はまだまだSD仕上げがメインという状況がある一方、HD収録も確実に増えつつあります。この場合、HD で収録
した素材をSDにダウンコンバートしてから編集するのが基本的なパターンですが、iQceは、SDと HDの入出力に対応していますから、この一連の作業をHDのまま行えます。もちろん機動性が欲しければ、割り切ってSDで取り込む手もある。仕事の内容に応じて柔軟に運用しています。
[HDm.]をスタートして大きく変わったことは、「iQceであればこうしたい」というように、VEさんが編集はどのようなシステムを使うのか、と聞いてくれるようになったこと。例えば、HDによるCM制作で は、ズバリ“フィルムライクなトーン”を求められるのがほとんどです。トーンといっても色だけではなくコマ数やシャッタースピードなど、細かい設定を有効に使うことでそれ“らしく”なるわけです。このような話し合いを持つことで、プロダクションの方は「前よりフィルムっぽくなったね」と感じてくれています。すごく地味なことかもしれませんが、撮影スタッフとポストプロダクションの間で、作品の狙いに対して、さらに踏み込んだ細かな話ができるようになったのは大きいと思います。