TVドラマ『古都』


 2005年春放送予定のテレビ朝日系2時間ドラマ『古都』は、全編VARICAMで撮影されている。
同作品は文豪・川端康成の原作で、これまでに中村登監督・岩下志麻主演、市川昆監督・山口百恵主演など、何度も映像化されてきた名作。フィルムライクの質感に加え、主演の上戸彩が双子の姉妹を1人2役で演じるため合成が必要なことから、合成作業との相性が良いプログレッシブモードの撮影が可能なVARICAMが選択された。撮影はV-Rec/60pモードで行い、一部回想シーンでは30pモードを採用。合成パートには、モーション・コントロール・カメラシステム[MC-MILO]が使われた。本編集、MA作業を含め、技術協力は映広が担当し、本編集はアビッドのノンリニア編集システムDS Nitrisで行われている。
撮影の加藤雄大氏、VEの三坂裕之氏、ポストプロ工程を管理した来栖和成氏に話を聞いた。

○テレビドラマの枠を超えた表現を目指して
 加藤氏:『古都』は、中村監督や市川監督などによって、何度か映画化されてきた作品ですし、プロデューサー、監督、僕らをはじめ、スタッフみんなの中に、そうした過去の作品に負けないものにしようという思いがありました。今までのテレビドラマの枠を超えた新しい方向性を持ち、映画的な雰囲気のある作品にできないか、など総合的に判断してVARICAMになりました。
ラッシュを見た限りでは、このままフィルムにしても良いと思えるあがりになっていると思います。VARICAMは、映画的なトーンを表現できる独特なガンマカーブが魅力ですね。この作品は、今から50、60年前の京都が舞台。その歴史の感じさせる日本家屋は、柱や壁、格子が深い色合いで、その中に真っ白な障子…と、コントラストがすごく高いんですね。VARICAMではハイを上手く収めつつ、壁や格子のローのところも十分に表現できていた。照明技師による絶妙なライティングバランスもありますが、特にVEの存在は大きかったと思います。今回VEを務めた三坂さんは僕の分身なんですね。何度か一緒に仕事をしていることもあって、お互いに分かり合えているので、イメージを伝えればほとんどその通りになる。照明も微調整で済み、時間的なロスがない。場合によっては、撮影チーフ、照明パートの役割も担ってくれる。HD撮影でVEは大切なポジションだと感じました。
今までテレビと映画の業界間には、歴然とした境界線があったと思います。VARICAMはその垣根を取り払い、同じ感覚で話し、映像を作れるようになった。電気的な機械ではあるけど、僕ら作り手の血の通った思いを的確に表現でき得るカメラだと思いました。

○好奇心をくすぐるカメラ、VARICAM
 三坂氏:作品の設定が、昭和20~30年代ということもあって、従来のビデオ的な雰囲気にはしたくなかった。ですから、通常のビデオガンマではなく、シネガンマを搭載したV-Recモードでフィルムっぽいトーンを狙いました。
クオリティ管理や後処理の効率性も含め、画は現場で詰めるのがベストだと思います。基本のカーブをベースに、監督や、カメラマン、照明技師の方と相談しながら、シーンの意図や天候などに合わせてその都度調整し、現場でほぼ完成形に追い込んでいきました。
VARICAMは、良い意味で「オモチャ」みたいなカメラですね。僕らVEは機械をいじる仕事ですから、新しい機能、項目があると触ってみたい。VARICAMにはそういうものが多分にあって、好奇心をくすぐりますね。使えば使うほど面白い面が引き出せる。
VARICAMを含めたHD制作システムは、今まで以上に現場でできることが増えました。監督やカメラマンの要求に対してダイレクトに応えることができますし、VEは今まで以上にクリエイティブなセンスが求められるのかな、という気がしています。

○映画、テレビの垣根を超えた新しい展開に
 来栖氏:『古都』の制作について、技術サイドから言うと、まず物語の設定上、主演の上戸(彩)さんが1人2役を演じるため、合成を行うことが前提としてありました。マスクの抜きなど作業効率を考えると、プログレッシブモードで処理するほうが良い。そして、フィルム的なトーンで、なおかつ動きは滑らかにみせたいというテーマでしたから、フレーム・レートを60とし、プログレッシ
ブ撮影ができるVARICAMに必然的にたどり着きました。
合成パートは、モーション・コントロール・カメラシステムMILOを活用して撮影しました。ドラマに違和感なくとけ込むよう、精度の高い合成に仕上げるためです。合成に関しては、映画「スパイゾルゲ」などで知られるマリンポストさんが担当しており、われわれと720/60pでの素材のやり取りを確認し、現在、作業を進めています。60pの滑らかな動きの中での合成が見どころになっていると思います。
われわれ映広では、ドラマを中心にテレビ番組制作の技術協力を行っています。昨年からVARICAMの技術的検証を重ね、本格的にVARICAMを活用したドラマ制作を提案しています。
VARICAMは、テレビスタッフでも「映画」が撮れるという画期的なカメラですが、ビデオフォーマットでフィルムライクな映像表現ができる、というVARICAMのパフォーマンスを持ってすれば、VARICAMで撮影したテレビドラマの劇場公開という新しい展開も考えられます。実際、映画関係者と仕事をする機会も増えましたし、そうした人的な交流も含め、VARICAMというひとつの機材によって、映画、テレビといった垣根を越えた新しい方向性、可能性が見えてくるのではないか、と期待しています。