Vシネマ『難波金融伝 ミナミの帝王』


 竹内力主演の人気Vシネマシリーズ『難波金融伝 ミナミの帝王』。その最新作、第51話「恐喝(おどし)のサイト」および第52話「闇の代理人」が、VARICAMで撮影された。 同シリーズはこれまでスーパー16で撮影されてきた。今回、ビデオフォーマットによる制作効率の観点からHDとし、F-Rec/24pモードによるフィルムライクな映像表現が可能なことからVARICAMが採用された。本編集はデジタルティーヴィスタジオで行われた。「恐喝のサイト」は2004年11月、「闇の代理人」は2005年2月にVHSカセットおよびDVDビデオでリリースされる。今後のシリーズ作品についても、VARICAMを活用していく予定という。プロデューサーの川崎隆氏、撮影の三好和宏氏に話を聞いた。

○ファンを裏切らないフィルムライクな映像
 川崎氏:『ミナミの帝王』は13年間続き、レンタルでも相当数出る人気シリーズです。今回、予算の圧縮など制作形態の見直しを検討する中で、これまでのフィルムと同等のクオリティで表現できるものは何かというところから、三好カメラマンのほうで、VARICAMという提案がありました。
三好氏:僕自身、フィルムのテイストを崩したくなかったですし、これまで見続けてくれているファンの方にも、違和感を感じさせたくないという思いがありました。基本的にビデオでリリースされる作品ですから、フィルム撮影でも2-3プルダウンのテレシネが不可欠です。今回、テレシネをかけた画と変わらないという観点から、VARICAM、F-Rec/24pモードを選択しました。

○フィルム撮影と同じスタイルでストレスなく
 三好氏:VARICAMで撮影した「恐喝のサイト」、「闇の代理人」では、フィルム撮影と変わらないシュートスタイルで撮影することができました。画的なことは、何度も繰り返しテストしていましたし、完璧にVARICAMを信頼していました。現場では、通常ビデオ撮影にみられるVEは立てずに、自分で露出を計り、絞りを決めて撮影しました。ですから、フィルムカメラがVARICAMにポンと入れ替わっただけで、フィルムカメラを使うのと全く同じ感覚。ビデオに変わったというストレスを感じることなく、普段通り撮影できました。撮影はリズムが大切ですから、現場でモニターチェックはせずに、1日の撮影が終わってホテルに帰ってから行いました。キズやノイズなど機械的なトラブルは一切ありませんでした。
画作りのテーマは、今までのシリーズを踏襲した質感を出すということです。フィルム撮影のときは、メリハリをつけたコントラストのある画作りをしていて、フィルムもラチチュードの広いフラットなものではなく、多少感度が悪くてもコントラストのあるフィルムを使っていました。今回VARICAMの撮影でも、そうしたトーンを再現しようと試みました。ですから、VARICAMらしさを意識して撮ったということはありません。フィルムと同じ感覚で撮るということに徹していたので。特にVARICAMならではの特性を感じたところと言えば、屋内撮影でしょうか。フィルムであれば相当ライトを当てて絞り込まないとバックが白く飛んでしまうところを、VARICAMはかなりハイを収めることができる。ラチチュードの広さを感じ、あがった画もキレイだなと感心しました。
フィルム撮影でも、ラッシュがあがったときにカットごとのトーンがバラバラだと駄目なんですね。ラッシュのときからタイミングしたようにつながっていないと、もう我慢できないというか。そういった意味では、VARICAMを使っても大体メーター通りのトーンが出ていたので、カットごとの明暗などはすべてつながっていました。

○VARICAM、今後の映像制作に向けた可能性
 川崎氏:プロデューサーとして初めてVARICAMを使ったわけですが、今までのフィルム制作のプロセスと変わらずに、ストレスなく制作できたのはVARICAMの持つメリットと言えるのではないでしょうか。フィルム、ビデオにはそれぞれの特性があり、作品によって使い分けていくという観点では、映像をプロデュースする立場からすると選択肢が広がったと言えます。またHDマスターを残しておくことで、今後、劇場公開、そして衛星を使った配信など、多メディアへのビジネス展開も可能です。僕自身、フィルムメーカーでいる限りでは、そういった時代はまだ先だろうと思っていたのですが、もう始まっているんですね。
三好氏:今回VARICAMを使ってみて、確かにハード自体は変わったのですが、撮り方も今までと全く一緒ですし、新しいフィルムという感覚を持ちました。カメラマンにとってカメラとは、真っ白なキャンバスに絵を描くように、色を付けるように、自分の思いを残していくものだと思います。VARICAMはそうなり得るカメラですね。僕自身、カメラマンとしてさまざまなカメラを経験してきましたが、初めから完璧なカメラはあり得ない。それは使い込んでいくうちに自分に馴染み、思いが伝わるようになって、カメラマンそれぞれにこだわりが生まれてくるものだと思います。そういった意味で、VARICAMには可能性を感じましたし、今後、VARICAMにこだわっていきたいなと思いますね。