LIVE DVD「MISIA:THE TOUR OF MISIA 2004/MARS and ROSES」


 リズメディアトライブからリリースされている女性アーティストMISIAのライブDVD『THE TOUR OF MISIA 2004/MARS and ROSES』。2004年1月から2月にかけて行われた福岡、名古屋、東京、大阪、札幌の5大ドームツアーのうち、東京ドーム公演をVARICAM延べ30台を使い収録した作品だ。DVDには、VARICAMで撮影したミュージック・クリップ「心ひとつ」のほか、今回のドームツアーの舞台裏を追った特典映像も収録されており、松下の24p対応ミニDVカメラ[AG-DVX100A]が活用されている。
制作会社は、ミュージック・クリップやライブ映像など音楽作品を中心に、CMや企業VPを手がける要堂。コンサート中継などで多くの実績を持つ権四郎が技術サポートを行った。VARICAMを撮影で活用した東京ドーム公演は1月17、18日の2日間。中継スタイルをメインとした撮影体制を敷いたのが大きな特徴だ。球場バックスクリーン前に設けられたステージに対して、マウンド後方にモニターやスイッチャー、VTRなどを組み上げて大規模なワークステーションを構築。初日はVARICAMを14台使い、うち中継カメラとして8台、残り6台をENG、2日目は計16台のうち、中継9台、ENG7台として活用し、F-RecモードでHD720/24p収録した。
オフライン編集は要堂、本編集はオムニバス・ジャパン。その際、ガンマコレクターを用いて、オフライン編集後の素材に対して最終的な色調整を施した。サウンドプロダクションは、MISIAの楽曲など音源に関わるすべてを手がけるユニバソールがミックスダウンを行い、そのライブ音源と映像を合わせ、最終的なMA作業(オムニバス・ジャパン)を行った。
要堂代表取締役でプロデューサーの松本恭直氏、ディレクターを務めた飯塚充洋氏に話を聞いた。

○ライブの臨場感を完全再現
松本氏:今回、特徴的といえるのは、“中継スタイル”を採ったことです。今、VARICAMでライブを撮影すること自体、それほど珍しいことではないと思います。ですが、基本的にVARICAMで、なおかつ複数台を用いたライブ撮影では、それぞれ単体のENGとして使われるケースが多い。そこで今回は、約半数のVARICAMをスイッチャーで一元管理し、ライブでスイッチングした映像をそのままDVCPRO HDに収録していくというスタイルを基本に臨みました。東京ドームはかなり広いため、ケーブルがあるとカメラワークが制限されるので、フリーに動けるENGスタイルのVARICAMも用意しました。
飯塚氏:VARICAMの使用台数は2日間で計30台、スタッフは総勢90人と、VARICAMを使ったライブ撮影としては、これまでにない大がかりなものとなりました。今回は女性アーティストとして初の5大ドームツアー。その熱狂と興奮に包まれた会場の臨場感を映像で完全再現する、ということに重点に置きました。それもただ撮るのではなく、リアリティがありながらもフィルムのようなクオリティ、かつ雰囲気のある質感で撮りたい、と考えていました。
松本氏:今回のライブ撮影は、映画と同じような撮り方をしたともいえます。映画では、例えば爆破などのシーンをカメラ複数台同時に回すケースがあると思いますが、それと同じ感じ。爆破の瞬間が1度きりしか挑戦できないものだとしたら、ライブではそれが2時間行われ続けている。僕らはアーティストのパフォーマンスや、ステージの演出に対して、どう表現したら観る人に一番伝わるかを考え、5台、10台とカメラをセッティングして、あらゆる角度から撮り、その中から一番良い画をチョイスしながらつなげていく。ライブ映像はいわばドキュメンタリーですから、一瞬たりとも撮り逃すことは許されないわけです。
飯塚氏:中継、ENGカメラは1台1台パラで回しています。中継カメラは“ステージ感”、ENGは“お客さんの目線”というテーマでそれぞれ撮りました。画のトーンをそろえるため、VEを立ててすべて調整しています。中継カメラは2台につき1人、ENGにもそれぞれ1人ずつVEを立てました。プログレッシブ・ピクチャーズの大橋(豊)さんにテクニカル・ビデオ・エンジニアとして参加・画質管理してもらいました。

○VARICAM:“求めていた質感
松本氏:そういった意味で、今回中継スタイルに加えて、もうひとつF‐Rec+24pという画作りにも徹底的にこだわりました。F‐Recモード、24pをチョイスしたのは、事前にいろいろ試してみて、24コマのパラパラ感などを含めトータルな質感として、結論的に僕らが求めているものに一番近かったからです。それならフィルムで撮ればいいということになりますが、フィルムは長時間回すことができないため、常にフィルムチェンジなどに追い立てられてしまい、ライブ向きとはいえない。確かにフィルムの質感は他には代え難い良さがあります。ですが、フィルム効果だけを追いかけるのではなく、“コンサートビデオとしてのクオリティ”が第一義であるので、映像の質感、機動性、コストの問題などを含めてトータルなバランスで考えたときに、VARICAMが最も良いチョイスだと判断しました。
また音楽DVDなどで特に目につくことなんですが、24pと30pで撮影した素材を混在したときに生じる2:3プルダウンの周期の乱れ、といった問題点があります。プログレッシブモニター再生時のカット点がノイズ的に見える症状。この問題を解決するため、今回は初めて撮影から編集まですべて24pフォーマットのまま作業を行いました。ライブDVDの制作で、ここまで24pにこだわったものは今までにないと思います。
飯塚氏:昨年制作したMISIAさんのライブDVDで、VARICAMをENGとして使っています。そのライブでのVARICAMの映像がとても良い質感だったので、本格的にライブ収録で使ってみたいと思いました。
松本氏:また昨年リリースされた楽曲「心ひとつ」のミュージック・クリップでもVARICAMを使いました。真夏の沖縄ロケであり、ドピーカンの強烈な日差しの下での撮影で、普通のビデオカメラならギラギラしてしまうところが、VARICAMによってしっとりとした質感で表現することができました。他のアーティストのミュージック・クリップなどで、これまでに何度もVARICAMを使っていましたが、そこであらためてVARICAMの持つ映像のクオリティ、また機動性なども確認できました。
飯塚氏:ステージはライティングが強烈なので、明るくまぶしい被写体と言えます。今回のライブ撮影では、照明はきちんと見せつつ、その“しっとりとした感じ”というのは狙いました。MISIAさんのライブは毎回、ライティング、舞台セットなどディテールまでこだわりを持って演出されており、クオリティの高いステージです。その完成されたステージを、どこまで忠実に再現できるか、ということがポイントでした。

○新しい映像表現の追求
松本氏:当社は、MISIAさんのライブ映像をデビューのころから任せてもらっています。所属事務所が映像をすごく大事にしており、“新しいこと”“人が今までやっていないこと”に対して積極的です。そういった経緯もあり、“キレイで、臨場感のあるライブ映像を目指そう”と、3年ほど前からHDでライブを撮っています。他のアーティストに先駆けていると言えます。
飯塚氏:僕自身、ライブ撮影では一度“フルVARICAM”でやってみたいと思っていました。そして今回念願かなって16台すべてのカメラでVARICAMを使うことができたわけですが、明るいステージと暗いオーディエンスの両方がしっかりと描写できることを実感しました。
松本氏:今回VARICAM+中継スタイル+F-Rec+24pによって、「シネマ・クオリティ・ライブ映像」と呼べるものがクリエイトできました。今、映像のスタンダードはHDになりつつあるととらえています。ライブ映像制作についても今後、僕らが取り組んだ方法が増え、またここからもっと進化したものも出てくると思います。
飯塚氏:できあがったものには、すごく満足しています。今できる最高のクオリティで表現できたと思っています。僕にとって、いつでも側に置いておきたい可愛い作品になりました。僕らクリエイターが、新しい映像表現を追求していく姿勢を、常に持ち続けていかなくてはいけないと思っています。