VARICAMが見た「カジノ」(アメリカ)


「ベガスで起きることは、ベガスの中だけのこと。」
ラスベガスを訪れた人がよくいう諺だが、それは『カジノ』が公開される6月14日までのことになるだろう--。
2004年6月14日月曜日、アメリカのフォックスTVの番組『カジノ』が放映された。
この番組はVARICAMで撮影されたゴールデンタイム放送初の“台本のないドラマ”シリーズで、驚異的な成功を収めたアメリカのTV番組「サバイバー」「アパレンティス」の製作者でTV界の大物マーク・バーネット氏とコンラッド・リッジ氏が手を組んだ、まったく新しいタイプの「現実のドラマ」。
現実の生活の舞台裏がテーマのこのドラマは、一日中撮影した13のエピソードから構成され、ゴールデン・ナゲットホテル&カジノの新しいオーナーであるインターネット事業家のティモシー・ポスター氏とトーマス・ブレイトリング氏が、2人でもう一度大成功を収めようとする物語だ。
2人は、築いた財産のほとんどを使って生涯の夢だったラスベガスのダウンタウンで最も大きいホテル&カジノであるゴールデン・ナゲットを購入し、ベガスで最も若いカジノのオーナーになった。インターネットのパイオニアである2人は、自分たちがもう一度ホテルを華やかな頃に戻し、ベンチャー企業家として再び成功することを信じている。そのゴールデン・ナゲットホテルは、50年代から60年代にかけて最も名を馳せたベガスカジノで、RatPack世代(アメリカの団塊世代)に人気のあったホテルだ。
マーク・バーネット氏は、今までの“現実ドラマ”シリーズの独特の雰囲気を1時間の番組で出すため、エミー賞を5度受賞した撮影監督スコット・ダンカン氏のビジュアルセンスを活かし、VARICAMで撮影することとした。ダンカン氏は「サバイバー」「アパレンティス」シリーズなど、およそ5年間バーネット氏と一緒に仕事をしている。
ダンカン氏の撮影クルーは、ベクセル社から合計22台のVARICAMをレンタルし、ラスベガスの客と従業員と新しいオーナーが繰り広げるドラマを、まるで視聴者が24時間こっそり覗き見ているような感覚にさせる映像を作り出した。
クルーはVARICAMを持ってカジノの新オ-ナ-であるポスター氏とブレイトリング氏を尾行し、着飾った現実の登場人物とエンタテイナーの行動を7週間以上も撮影した。視聴者は毎週、お金持ちになろうと夢みてラスベガスにやって来る人々を見て、まるでギャンブルの世界を、内部から見ているような気分になれる。

 ケビン・ハリス氏(監督兼プロデューサー):今回のようなスケールの大きい、台本のないTVドラマをHD撮影するには、マルチカメラ制作でなければ、とマーク・バーネットプロダクションでは考えています。パナソニックと協力したことは非常によかったし、結果にも満足ですね。台本のないドラマの新しいスタンダードともいえる作品ができたと思います。

 カメラのほとんどは、ブレイトリング氏とポスター氏、そして彼らのスタッフが遭遇するトラブルを撮影するために用意した。ドラマの大部分はギャンブル場で起こるので、リモコン操作で回転・傾斜するヘッドをつけたVARICAMを3台天井に、加えて4台をガラスの後ろの三脚に設置し、計7台でスリリングな場面を狙い続けた。

 ダンカン氏(撮影監督):『カジノ』は、ゴールデンタイム放送の台本のない“現実ドラマ”シリーズでは、初めてのHD撮影だったので、私と撮影監督はVARICAMの機能を最大限活かして、なんとかすごい映像を撮ろうと四六時中考えていました。映像をカスタマイズできるVARICAMだったからこそ、全シーン質感のある美しい映像が撮影できました。

 常にクライアントからビジュアルのクオリティを高く評価されているダンカン氏だが、今回VARICAMを使ったことで以前のSD撮影の“現実ドラマ”シリーズではできなかった新しい映像が生まれたという。

 ダンカン氏:秒間60フレームの高速度で撮影して、時の経過を鮮やかに描き出したり、24フレームHD撮影のもつ映画のような雰囲気を出したり、VARICAMをフル活用しました。
撮影では、22台のVARICAMが1日最高20時間で46日間回り続けていて、ほとんど中断らしい中断はありませんでした。クルーは登場人物を追いかけ回して撮影したので、カメラの扱いはかなり乱暴でしたが、VARICAMはぶつけてもビクともせず大丈夫でした。結局1日190本ものテープを撮影しましたね。

 『カジノ』では、これまで見たこともない映像を撮影するため、クルーはジブアームや30フィ-トのテクノクレーンなどにVARICAMを取り付け、これまで大手テレビ局がとらえたことのない場所にも入り込んだ。カジノは照明も内装も暗く、また、ホテルの白い外装も白っぽく飛んでしまいがちで難しい撮影も多かったが、VARICAMは十分に対応できたという。
路上でのアクションシーンなどにおいて、VARICAMさまざまなシャッタースピードで撮影できるため、秒間4~60フレームの高速撮影やスローモーション効果を付けられるのも大きなメリットだったという。

 ダンカン氏:そろそろいいシーンが来るなという予感がすると、秒間60フレームで映画のようにスローモーション撮影しました。ほかにも瞬くネオンライトや光線をフレームレートを変えて撮影すると、いい効果がでた。色とりどりの光はまさにベガスらしい光景ですからね。

 シーンを低速度(アンダークランク)と高速度(オーバークランク)で撮影しておけば、プロデューサーは多くの素材の中から吟味して、ドラマティックな物語を演出できる。

 ダンカン氏:こと細かにプロデューサーにストーリーやその意味などを説明しなくても、美しいスローモーション映像があれば、それに勝るものはないですから。フレームレートを変えてVARICAMで撮影したラスベガスは、見るものを惹きつける魅力に満ち溢れていましたよ。
カジノをVARICAMで撮影できて本当に良かったです。フィルム撮影と変わらないといっていい。美しい色や映像を、自分のイメージに従って独自のスタイルや感覚で自由に表現できるんですから。

 なお、マーク・バーネット氏の制作プロダクションは、VARICAM以外にもDVCPRO HD VTRなどパナソニックの各種機材を使用しており、 スタジオエディター[AJ-HD1700]、ポータブル[AJ-HD130]、ハイコントラスト・プラズマディスプレイを使って、オフライン編集や映像の確認等を行っている。