ブランドの重要性~テレビCM制作(シンガポール)


 制作会社Define Imagination社のClayton Lai監督は、テレビCMのクライアントから最新のマンション「Ris Grandeur」のテレビCMの制作依頼を受けた。
CM内容は、「Ris Grandeur」に暮らす、地元の人気スターHuang Shinan氏とPan Lingling氏が演じる家族が、写真や記念品を集めた手作りのアルバムをめくりながら思い出を振り返る、というもの。エージェンシーはAmage Productions、制作プロダクションはThe Film ForumとDefine Imagination、編集はInfinite Frameworks、音響はAMX Audiophilesで、プロデューサー&撮影監督はDavid Lee氏が務めた。

 Lai氏(監督):Huang氏とPan氏がアルバムをめくるところからCMはスタートする。そこにはマンションRis Grandeurの写真があり、カメラが近づくと木々や鳥たちが動き出して、アルバムの中の世界に入り込む。そしてRis Grandeurでの楽しい日々が次々と紹介され、ラストにもう一度Ris Grandeurの写真に戻る。ちょうどCMのオープニングとエンディングに写真を持ってくるという構成になっている。

 マンションの部屋すべてを、見栄え良くかつナチュラルに紹介して欲しい、というクライアントからの意向があったため、部屋をただ単に詳しく紹介するのではなく、もっと効果的な手法を考えることが必要だったという。

 Lai氏:リビング、キッチン、バスルームと順番に見せる方法もあるけど、なにか工夫できないかと思った。結局、部屋を見せつつ、映画のような動きも入れて空間の魅力を伝えようということになった。顔の知れた地元のスターを使えたことも大きかった。それだけで受け手を引きつけることができるから。撮り始めると、空間をどのように撮るかより、彼らにどんな思い出の瞬間を演じてもらうかがより重要になってきた。これは当然のなりゆきで、クライアントもこの方向性を認めてくれた。

 次に問題となったのは、予算をかけずに映画のような映像を撮れないか、というものだった。当初予算は25000シンガポールドル(14500米ドル)でデジタルベータカムで撮影する予定だったが、撮影監督のDavid Lee氏に相談したところ、その問題をクリアするために、VARICAMを使って高画質で撮影することが提案された。

 Lee氏(撮影監督):テレビのCMだと十分承知した上で、Lai監督はどうしても映画のような画面が欲しいといった。私は、もしやるのなら非常に高画質な映画風の画面でないと意味がない、と言った。最初、予算に見合ったP+S Techik Pro 35かMini 35にしようと思っていたが、その後やはり VARICAMのHD25p の方がよいと判断し、Lai監督にエージェンシーとクライアントを説得するように伝えた。

 VARICAMはデジタルベータカムよりも高価だったが、予算を少しオーバーするくらいだったので、Lai監督はVARICAMを強く希望した。VARICAMを使えば、Lee氏の撮影能力も存分に活用できるためだ。

 Lai氏:David氏の映画照明に関する経験は貴重なものだ。VARICAMで撮影するからには、これを活かさない手はないと思った。
クライアントには、技術的にどうこういうより、一番手っ取りばやいのは、ビデオ画像と映画の画像を比べて見せること。彼らは非常に興味を示してくれた。結局問題は、このキレイな画質のためにもうちょっと予算を出せるかどうか、ってことになり、答えはイエスだった。実はもともと私は16ミリか35ミリで撮りたいと思っていて、それはちょっとコストが高くなってしまうと言われたので、それならVARICAMで撮りたいと申し出た。映画並みの絵が撮れて、予算的にもOKということで、ベストな選択だった。そうしてクライアントには予算の上乗せを承諾させたんだ。

 パナソニックシンガポ-ルとレンタル業者Camera Quipの協力で、CM撮影は完了した。 アルバムに忠実になるように、さまざまなアングルやフレーミング、アクションをいくつも撮影し、全部で14シーン撮影した。

 Lee氏:自然光から人工的にコントロールした照明までいろいろな照明の下でVARICAMを使って撮影した。シャドウとハイライト領域間ではせいぜい2.5ストップしか扱えないビデオカメラがほとんどなので、ラチチュードがどうなのかちょっと心配だったが、VARICAMでは4ストップ以下のシャドウ領域でもディティールが失われなかった。白い部分で3.5から4ストップでもビデオにはありがちな白トビは見られなかった。VARICAMの照明のコツは「フィルム撮影のようにしつつも7から8ストップにすること」。
デジタル撮影するときは、撮影監督の良し悪しがものすごく影響する。映画の撮影と同様に照明はとても重要なってくるからね。我々と同じ方法で撮影するのなら、ビデオの照明で撮らないほうがいい。きっとがっかりするから。

 Lai監督とLee撮影監督はVARICAMのさまざまなフレームレートを活かすシーンをいくつか選びだした。家族でプールに出かける場面では、ほとんどを42 fpsで撮影し、水しぶきのいきいきした表情をスローで捉えた。また、スタジオでブルーバック撮影する規模ではなかったため、CGの背景が必要な2つのシーンでは、それぞれの現場でクロマキーを設営して撮影した。
マンション「Ris Grandeur」のテレビCMのポストプロダクション作業は、HD制作の設備が整うInfinite Frameworkで行われた。すべて4:2:2 DVCPRO50レベルでデジタル化され、AJA Konas HD I/Oカード搭載のアップルMac G4上でFinal Cut Proを使って編集された。原版はDVCPRO50マスターからダイレクトで書き出し、デジタルベータカムフォーマットで納品された。