さらなるものを求めて(マレーシア)


 マレーシアで幽霊が地上を徘徊すると伝統的に信じられている第7の太陰月(旧暦の7月)に映画『Visits: Hungry Ghost Anthology』が公開された。このデジタル映画自体はインディーズ映画の亡霊などではなく、商業的な名声に値するアートと確かなストーリーが混在する作品となっている。
クアラルンプールのインディーズ映画制作会社レッド・コミュニケーションズのLina Tan氏は、昨年のラジオやテレビの過剰なまでのハロウィンの商業的なお祭り騒ぎに嫌気がさし、ついに数年温めていたアンソロジー映画のアイデアを実現化するために動き出した。
映画『Visits: Hungry Ghost Anthology』は、第7の月(旧暦)のハングリー・ゴースト・フェスティバルの間に起こる4つの怪談を集めたオムニバス映画。この祭礼はマレーシアやシンガポールでよく行われている霊祭で、有名な中国の言い伝えでは、第6の太陰月の最終日、真夜中に地獄の扉が開き、飢えた幽霊たちが解き放たれ、第7の月の最後までの30日間、人間界で暮らすといわれている。

 Tan氏:中国のハングリー・ゴースト・フェスティバルは、すでにわたしたちの文化の一部です。こういった伝統的なものに興味があるのですが、現代でもこの霊の月は実際信じられています。そこで、撮影は国際都市クアラルンプールで行い、登場人物はみな現代に生きる都会の人にしました。マンションに住み、他人とは切り離されている人々です。そして、旧暦の7月の時期に公開し、監督たちに死者がよみがえるというコンセプトを広めてもらい、中国の言い伝えのような話を作ってほしいと思ったのです。

 監督には、受賞経験のあるLow Ngai Yuen氏、James Lee氏、Ho Yu Hang氏、Ng Tian Hann氏ら4人を起用した。以前に彼らが作ったホラー作品を見てTan氏が選んだという。
『Visits: Hungry Ghost Anthology』は、Low Ngai Yuen氏が「1413」、James Lee氏が「Waiting for Them」、Nodding Scoop氏が「Nodding Scoop」、Ho Yu Hang氏が「Anybody Home?」というそれぞれ作品を監督した。4編トータルでの製作総指揮はLina Tan氏、プロデューサーはJavine Wong氏、編集はTan Peng Khoon氏が手がけた。
また「1413」の撮影監督はHaris Hue氏、美術はKek Teng Lam氏、「Waiting for Them」の撮影監督はTeoh Gay Hian氏、美術はEleanor Low氏、「Nodding Scoop」の撮影監督はAlbert Hue氏、美術はEleanor Low氏、「Anybody Home?」の撮影監督はTeoh Gay Hian氏、美術はWee Hunn Seong氏がそれぞれ務めた。
4つの話はそれぞれ違うストーリーで、30分間それぞれのテーマを扱っているが、お互いに複雑に関係し合っている。芸術的でありながら一般的にも十分通用する映画になった、とTan氏は確信する。
レッド・コミュニケーションズが調達した製作費は約70000米ドルという規模だったため、上映はデジタル限定で行った。それに伴い、撮影もデジタルとなった。

 Tan氏:監督4人ともデジタル撮影の経験がありました。予算の少ないインディーズの監督はデジタルで撮影しデジタルで公開していたので、この映画もデジタルで撮ろうということになりました。
カメラには[AG-DVX102A](AG-DVX100Aのアジアモデル)を選択しました。いろんなカメラを検討したんですが、最終的にはこのカメラの持つ色とフィルム撮影のような設定がベストだという撮影監督の意見が採用されました。
撮影クルーを集めるのに約1ヶ月かかったが、撮影はクアラルンプールで1日平均16時間、合計16日間で終了したという。また、予算が少ないという問題以外にも、新たな問題が浮上した。ホラー作品という性質上、撮影を許可してくれるところが非常に少なく、やむを得ずゲリラ撮影に及ぶこともたびたびあったとしている。その一方、映画業界からのサポートは多く得られたという。

 Tan氏:出演を依頼した人はみな承諾してくれました。メイクアップアーティストやヘアデザイナー、スタイリストやアートディレクターなどTVCMなどで高額のギャラをもらっているプロたちも快く仕事を受けてくれました。
出演を受けてくれたキャストがベストのメンバーですね。Carmen Soo氏、 Wong Sze Zen氏(2003年ミス・マレーシア)、Jackie Lim氏、歌手のPete Teo氏やIan Yeoh氏など一流の人が参加してくれたのはラッキーでした。映画界でのわれわれのプロデューサーとしての評価と、監督の評判がよかったおかげだと思っています。

 撮影完了後、レッド・コミュニケーションズのスタジオのFinal Cut Pro 4で編集し、音響効果をDFX、MAをAdd Audioで行った。

 Tan氏:音響は非常に重要な要素なので、妥協はしたくなかったんです。最近の大作「Putri Gunung Ledang」など多くの長編映画や、高額の制作費のTVCMなどを手がけたマレーシアで一番優秀な音響会社にコンタクトをとりました。彼らはよくサポートしてくれ、適切な音響の設定など常にアドバイスしてくれました。生の音声を録音するために音響エンジニアも派遣してくれたんです。
デジタルで撮影した一番大きな理由は予算が安いということです。結果にも非常に満足していますよ。実際、予告編の試写では、この映画のことを知らないデジタルシネマのハードウェアエンジニアが、「香港映画ですか?」と聞いてきました。私たちがデジタルで撮影したものだと知って驚いていました。これ以上の誉め言葉はないですね。

 『Visits: Hungry Ghost Anthology』は、クアラルンプールとペナンのゴールデンスクリーンシネマで2004年8月下旬から公開された。なお、同作品の配給元のゴールデンスクリーンシネマは、マレーシア国外の公開について、各国の関係者と交渉しているという。