デジタル時代到来か?(インド)


 映画カメラマンのP.C. Sreeram氏は、Avidのエージェントであるリアルイメージ社のオフィスで初めてVARICAMを見たとき、興奮で舞い上がりそうだった、という。リアルイメージ社のSenthil氏から使ってみないかと言われ、それが契機となってインド初のHDデジタル映画「Vaanam Vasappadum」を撮ることになった。そして、これがインドにおけるデジタルブームのきっかけとなった。Sreeram氏曰く「HDデジタルフォーマットでの映画依頼がすでに2、3件来ている」とのこと。HDはデジタルフォーマットの最新の技術として、インドの映画でも採用されつつあり、確実に将来のメイン媒体になるといわれている。

 Sreeram氏:電子媒体であるHDは従来とは違ったシステムで製作するから、いざというときに心強い。HD出力はフィルムに比べ、彩度が高く、解像度が低く、露出寛容度が狭いんだけれど、HD技術で特殊効果をつけたり、加工がしやすくいろんなアイデアを試せる。それにネガフィルムも不要で経済的。
Mahesh Muthsamiha氏(Sreeram氏のアシスタント):デジタルで上映できることも大きな利点だ。従来の映画では、フィルムが1秒間に24フレームの速度で物理的に動く。初日はきれいなフィルムでも、10日も経てばホコリやピンホールがつくのはどうしようもない。こうして日が経つにつれ、クリアな画質が失われていってしまう。ところがデジタル上映は物理的に動くわけではないので、100
日たっても鮮明な画質をキープできる。

 Sreeram氏は監督も兼任していたため、やるべきことが山積みで、仕事に追われる毎日だったという。

 Mahesh氏:ただ、HDを理解するのは、はじめのうちはまるで汚れたフロントガラスの車で走るみたいだった。しかも太陽がぎらぎらまぶしい中をね。仕事がやっと本格化するまでにかなり時間がかかってしまった。出力のテストだけで半年はかかったね。ネガを日本へ送っては、上がり具合を見ていたよ。
Sreeram氏:苦労もあったけどとても満足している。すごく勉強になった。

 HDフォーマットの長編映画はまだ少ないが、デジタルを活用した映画は数多く出てきている。ハイデラバード市が2002年に他の都市に先駆けてHD映画「Vendi Mabbulu」を公開したとき、インド初のデジタル映画ということで大掛かりな宣伝が行われたが、興行的には成功しなかった。同作品のカメラマンは、室内が舞台で特殊効果をたくさん使うような映画では、HDを使う意味がある、という結論を持ったという。

 Preetha Jayaraman氏(映画「Knock Knock I'm Looking To Marry」のカメラマン):この映画の舞台はほとんど室内で、照明をコントロールできたからデジタル向きでした。

 また、アイデアが豊富だが、予算のない映像作家にとってデジタルは救いの手ともいえる。

 Preetha氏:私たちは、ストーリーを伝えることが最も重要です。オーディエンスがいったん話に引き込まれたらメディアがなんであろうと関係ない。デジタルとフィルムはまったく違うもの。しかし私たちの映画のような予算が少ないものを作って配給するにはぴったりです。

 「Knock Knock I'm Looking To Marry」のクルーは経験も予算もない22~27歳の若者たちで、これが初めての映画という人もいた。監督のAnita Udip氏は映画を撮り始めたときLoyala Mary Mount大学の3年の映画コースを終えたばかりだった。

 Anita氏:バンガロール市のソフトウェアの専門家たちが、恋愛結婚とお見合い結婚について論争するというストーリーは、デジタル制作にぴったりでした。ベストの結果を得るには、デジタルの限界を理解しておくことです。「Knock Knock I'm Looking To Marry」は発売されたばかりの[AG-DVX100]で撮影しました。幾度もテストと上がりを吟味し、このカメラで出せる最高の色範囲、解像度、色密度を実現する設定を見つけたんです。
Sreeram氏:知識さえあれば、デジタルカメラであっても最高のものができる。

 なお、リアルイメージ社では現在、映画館のデジタル上映化計画「キューブシネマ」に取り組んでいる。すでに国内のいくつかの映画館ではデジタル上映ができるように整備されているという。デジタル上映が携帯電話並みに普及すれば、デジタルでの映画制作も本流になると予測されている。