スウェルピクチャーズ、ギリシャの特番を
VARICAMで撮影(アメリカ)



 監督・撮影監督・プロデューサーのGeoffrey Madeja氏は、歴史チャンネルのドキュメンタリー番組2本の撮影を、VARICAMで行った。
その2本とは「古代生物学」と「考古学」に関する60分番組で、オリンピック誕生の地であるアテネで開催された2004年8月のオリンピックに先立って放送された。
プロデューサー兼脚本をMarcy Marzuki氏が、プロデューサー兼編集をBernie Dudek氏が、シリーズのプロデューサーをJoe Doria氏がそれぞれ担当し、イリノイ州シカゴのスウェルピクチャーズが制作プロダクションを務めた。VARICAMをはじめとする撮影機材については、同じくシカゴに拠点を持つZacuto Films社が提供した。
長年、全国規模のコマーシャル映像を手がけてきたMadeja氏だが、数年前からスウェルピクチャーズと一緒に仕事をするようになった。
そして、Madeja氏は長編ドキュメンタリーの仕事に興味を抱くようになり、再びスウェルピクチャーズの歴史チャンネルの仕事がきたときに、自分がこれまで長い間手がけてきたCM制作のなかで培った高品質な映像制作というものを、ドキュメンタリーというジャンルに新しいカタチとして持ち込みたいと常々思っていたという。
これまでの「Forensic Firsts」「The Oracle of Delphi」といった歴史チャンネルの特番では、ロケーション撮影にスーパー16フィルムを、またインタビュー映像の撮影にデジタルベータカムをそれぞれ採用していた。

 Madeja氏:ギリシャ本土と離れ島の2ヶ所で、1ヶ月間でドキュメンタリーを2本撮るというのはスケジュール的に結構きつかったですね。フィルム代はどんどんかさんでいくし、なにしろたった3人で2つのカメラシステムを担いで山を登ったり降りたりするのにうんざりしました。
それまでにもVARICAMを見たことがありました。とくに、バリアブル・フレーム・レート機能によるその撮影機能には感心しました。こういったドキュメンタリーにはいろんな速度で撮影した映像が欠かすことができないですから。
VARICAMはそのときすでに世界中で売られていたので、購入しようと思えばアテネでいつでも入手できると思っていました。
クレタ島の撮影では、500フィートも険しい岩崖を登って、1000フィートの谷のある峡谷まで行きました。とても危険なので機材一式をリュックにつめて、われわれ3人だけで登りました。一式といってもVARICAMと三脚、ジブアームだけで、あの大きさのカメラにしては軽いと思いました。
気温は40℃近くもありましたが、VARICAMは全く大丈夫でした。機材一式を背負っていたため、カメラの日除けのことまで気が回らないこともありましたが、強烈な日差しと高温の中でもまったく問題なく動作してくれました。
VARICAMの素晴らしいところは、まずなにより「色」です。それは、現実の自然より美しいかもしれない、と思うくらい色表現のチカラがあると感じました。


 レンジが広いので、普通のビデオカメラよりずっと暗い部分の深度が深く、ちょうどフィルムのようなコントラストが表現できます。たいした照明設備がなくても、かなりのところまでちゃんと撮影できます。例えば、青い海をバックに白い岩を撮る、といったシチュエーションでも、露出オーバーになることがなかった。岩の部分に合わせて露光しておいて、背景はあとで編集することができるんです。
加えて、撮影場所で撮影結果をすぐ見ることができるのも大きなメリットです。ですから、フィルター・コントロールも多用しました。そして、現場でイメージする映像をかなりつくり込める。個人的にポストプロダクション作業の編集であれこれやるよりも、撮った時点できれいな映像にしておく方が好きなんです。

 ドキュメンタリーのなかで撮影された戦闘シーンは、毎秒60フレームや48フレームで撮影されたという。また、実験的に、肉眼と同じ12フレームでの撮影も行われた。

 Madeja氏:町に略奪しにきた武装集団を煙や火の中で撮影したときも、映画並みのいい映像を撮ることができました。

 撮影はMadeja氏と、同氏と仕事経験のあるアシスタントカメラマン兼プロデューサー兼編集のDudek氏の2人で行った。

 Dudek氏:できる限り高画質で撮影したいけれど、これまでのギリシャでの撮影は、少ないクルーで機材一式とフィルムを運ぶのはとても大変でした。もっと運びやすくて同じように撮影できるものはないか、とずっと思っていました。特に撮影スピードをいろいろ変えられるものを探していたので、必然的にVARICAMで撮影することになりました。
これまでずっと車では行けないようなへき地や、高温、砂、塩水など自然条件の厳しいところで仕事をしてきました。VARICAMは、起動時間も速く持ち運びも簡単で、タイミングを逃さず沢山撮影できる。メディアも運びやすい。
Joe Doria氏(番組のプロデューサー):今までドキュメンタリー撮影にかかっていたフィルム代に比べて、テープの方がコストが低かったので、VARICAMを使って HD撮影することにしました。高画質でスロー撮影できるこのカメラは、今回の企画の主旨、狙いにまさにぴったりでした。

 編集作業はDudek氏 がスウェルピクチャーズのAvid Media Composerを使って行い、最終的にはHD 完パケを作成する予定となっている。

 Madeja 氏:VARICAMはドキュメンタリー向きのカメラです。たった一台のカメラで、フィルム撮影のように実に美しい場面を撮影し、普通のインタビューも撮影できる。その上フィルム代、音響合わせ、色補正など大幅にコストを削減できる。つまり一切の妥協なしに、自由に撮影できるんです。