P2HD によるニューストータルシステムを構築

北陸朝日放送 株式会社 様
完全テープレスワークフローを実現する同社の
ニュースシステム
上段左:“P2cam”AJ-HPX2100
上段右:新設されたニュースサブ
下段左から:送出サーバー、P2 アーカイブ、“P2mobile”AJ-HPM100、取材用P2 カード保管棚


北陸朝日放送株式会社
金沢に本社を置く北陸朝日放送株式会社様は、P2HD でニューストータルシステムを構築し、テープレスワークフローを2007 年10 月から稼働した。ネットワークも含めたP2HD トータル・ワークフローの構築は初めて。報道取材用カメラに“P2cam”AJ-HPX2100 × 5 台を導入し、収録した素材は“P2drive”AJ-PCD20 から、ノンリニア編集システム× 3 式に取り込んでダイレクト編集。ファイバーチャンネル等のネットワークを介して送出サーバーにファイル転送し、報道支援システムと連動した新ニュースサブに設置されたニュースワンタッチ送出システム(OTC)からのリモート制御で送出する。ノンリニア編集室× 2 室およびニュースサブ内にノンリニア編集システムを導入したほか、現場では“P2mobile”AJ-HPM100 による簡易編集ができるとともに、“P2gear”AG-HPG10 や記者用PC でのプレビューも可能。ANN 系列支援や長尺取材における1/2 インチテープでの運用が可能なリニア編集室× 1 室も新設。各編集システムにおける素材共有やP2 アーカイブシステムからの素材検索なども可能となっている。一方、ニューススタジオにバーチャルスタジオシステムを採用しているのも大きな特徴。

技術局長・野呂奔氏
メディアコストの削減に期待
今回導入したP2HD 取材報道システムは、報道取材用カメラとして“P2cam”AJ-HPX2100 × 5 台(うち1 台は輪島支局に整備)、“P2mobile”AJ-HPM100 × 3 台、“P2gear”AG-HPG10、“P2deck”AJ-HPS1500 × 2、“P2drive”AJ-PCD20 × 3 式など。P2 カードはAJ-P2C016RG(16GB)× 60 枚を有しており、カメラごとにP2 カードを割り当て、専用ラックに収納することでカードの管理を行っている。なお、年内にはAJ-P2C032RG(32GB)× 43 枚を追加導入する予定。
技術局長の野呂奔氏は「初年度である今年こそP2カードのメディアコストがかかっていますが、1 年後、2年後にはこれらが不要となっていくことで購入コストおよび保守費が削減されることに期待をしています。ローカル局にとっては、2006 年のデジタルマスターと一部のサブ更新という非常に費用のかかる大きな問題でしたから、初期コストばかりでなくランニングコストも考えたとき、P2HD での運用は非常に有効だと思っています。今後、半年~ 1 年かけて検証していきますが、P2HD の選択は間違っていないと思っています」と話している。
"P2dr ive" AJ‐PCD20を実装したノンリニア編集室(上)と、"P2deck" AJ‐HPS1500を実装したリニア編集室(下)

テープレス&ネットワークにより大幅な時間短縮
同社では、P2HD 収録システムの採用により、編集作業の大幅な時間短縮を可能とした。報道支援システムとの連動でニュース取材情報をメタデータとしてカメラレコーダーにアップロードでき、デジタイズレスのダイレクト編集による編集作業の高速化や、報道支援システムからのメタデータによる検索が可能なP2 アーカイブシステムなどを実現している。
日常の放送業務は、報道支援システムに登録された取材予定データを“P2cam”のメタ情報に反映、収録した映像や音声ファイルとともにP2 カードに記録される。撮影した素材を用途に応じて“P2mobile”“P2deck”“P2drive”を用いて取り込み、ダイレクト編集された後、ニュースサブの送出サーバーに登録。サーバーを制御しているOTC からワンマンオペレーションで送出する。
また、P2 カードに記録されたMXF ベースのP2 コンテンツファイルは、カノープス社製のノンリニア編集システムと互換性を確保しており、デジタイズレスのP2 カードダイレクト編集を可能としている。編集されたコンテンツは素材サーバーに登録され、OTCからのリモート制御で、送出サーバーから送出される。
P2 アーカイブシステムは、各ノンリニア編集システムとネットワークで結ばれており、素材および完成済みコンテンツを、報道支援システムからのメタ情報が付加されたP2 コンテンツファイル形式のまま保存する。OA アーカイブおよび粗編アーカイブ方式を採用し、メタ情報により検索やプレビューが簡単にでき、保存された映像アセットの2 次利用を容易に行えるようになっている。

技術局技術部副部長・
北川嘉市郎氏
ネットワーク&テープレス運用開始に最適なタイミング
技術局技術部副部長の北川嘉市郎氏は「地上デジタル放送の開始に併せ、ニュースシステムのネットワーク運用とテープレス運用について検討してきました。ネットワーク運用はコスト面でローカル局にも採用できるようになってきた一方、テープレス運用については様々な意見があったものの、“いつまでもテープの時代ではない”“ローカル運用と系列応援に対応できれば問題ない”と考え、採用に踏み切りました」とする。
また、P2HD 採用については「P2 カードの16GB タイプが出てきた段階で使えると思いました。32GB タイプも発売目前であり“やるなら今だ!”というタイミングでした。ノンリニア編集システムは、P2 との整合性がとれていることからカノープス製を採用しています。アーカイブはLTO を使用した小型カートでスタートしていますが、今後の運用状況を見ながら大型カートへのセットアップも考えています」としている。