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■ドラマ向けスタジオにスタジオカメラを納入
株式会社TBSテレビは、ドラマ収録スタジオである緑山スタジオの「M1スタジオ」「M2スタジオ」にマルチフォーマットカメラAK-HC3500システムを導入しています。 同社は神奈川県横浜市青葉区緑山にドラマ向けのスタジオ(M1~M5)と広大なオープンスタジオを構える他、東京都世田谷区砧には多目的向けのスタジオ(K1、K2)を有しています。 「M1スタジオ」は、時代劇の撮影などに多く使用され、「M2スタジオ」はTBSや他の民放局のドラマ制作に貸スタジオとして幅広く使用されています。1月9日からオンエア開始されたパナソニックドラマシアター「ステップファザー・ステップ」(TBSテレビ/毎週月曜夜8時~)も、このM2スタジオで収録されています。 株式会社緑山スタジオ・シティは1982年、株式会社東京放送(当時)により設立され、カメラシステムを始めスイッチャー、オーディオミキサー、VTR、照明など、スタジオの管理・運営・メンテナンスを中心とした業務を行っています。
■プロの映像を送り出す放送用カメラに高画質は不可欠
同社では、BSデジタル放送の開始時に導入したAK-HC800シリーズの後継機としてAK-HC3500の採用を決定し、2009年度には「M1スタジオ」に6式(ビルドアップ3式)、2010年度には「M2スタジオ」に7式(ビルドアップ3式)を導入、現在では合計で13式のAK-HC3500が稼働しています。
立花 成樹 氏
TBSテレビ 技術局 技術推進部 担当部長の立花成樹氏は、AK-HC3500の採用にあたり、S/Nや色の再現性をはじめとする“高画質”に加え、小型・軽量、現場での過酷な使用に対する堅牢性が選定の決め手となったと振り返っています。 「デジタル放送における“プロの映像”を送り出す放送用カメラに最も求められるものはやはり高画質です。特にドラマの撮影では画質や質感などに対する要望が非常に厳しく幅広いわけですが、AK-HC3500は明るいシーンから暗いシーンまで繊細で忠実な色再現を実現しています。特に暗部の黒の階調や、人間の肌の色の表現について優れていると評価しています。また、最近ではセット内でも手持ち撮影が増えていますから、このカメラの小型・軽量は大きな魅力ですし、高倍率レンズを付けた時などのカメラヘッドのバランスも非常に優れていると感じます。」(立花氏) AK-HC3500の高画質、堅牢性は、東京・赤坂にあるTBSテレビ本社の中継車運用でも実力を発揮しています。
■限界解像度×ガンマカーブ×分光特性とのマッチングによる優れた“色再現性”
野々村 直 氏
AK-HC3500の“色再現性”については、緑山スタジオ・シティ 技術部 担当部長の野々村直氏も高く評価しており、特に「黒の階調性は絶品」と話しています。 「高画質=高解像度ではありません。解像度、色再現、S/Nの3つによるきれいな三角形が形づくられてこそ“高画質”であると言えます。AK-HC3500の最大の特長は、暗部の階調の良さ。黒の階調の表現は様々なところに求められてきますが、特にドラマという過酷なジャンルにおいては、画面全体が暗い中でも情報量の豊かな映像が得られるこのカメラの良さが最大限に活かされていると思います。役者の顔の表現とその背景となるセットの暗い部分との調和、陰影のあるセットにおける色再現性が優れています。」(野々村氏) 黒の階調性の良さは、例えばドラマ中のお葬式のシーンを撮影した時に明確に現れるそうです。化学繊維、ウール、シルクなど異なる素材でできた喪服がすべて真っ黒に映ってしまうのではなく、素材の違いまでしっかりと再現するほか、黒の上に載った黒の輪郭や質感をしっかりと表現するためには、解像度とディテール信号の処理も大きく影響します。 「AK-HC3500は、限界解像度の高さに加え、ガンマカーブの良さ、優れた分光特性とのマッチングの良さがあいまって、高輝度から低照度に至るまで豊かで滑らかな映像となり、非常にまとまった色再現性を実現していると実感しています。また、AK-HC3500のガンマカーブは、特に時代劇などでの情緒的で古風な画創りにも効果的です。」(野々村氏) AK-HC3500の色再現性の良さは、カメラマンばかりでなく、ビデオエンジニアやライトマンからも「自分が狙った表現や調整ポイントに持っていきやすく、ストレスを感じない」と高い評価を得ているそうです。
■高まる“フィルムライク”のニーズにも対応
家庭用テレビが高精細になり、映像の“味付け”の差がはっきりとわかるようになってきたことや、ドラマを演出するディレクターの好みもあり、最近ではフィルムで撮った時のような映像が出せる機能やプログレッシブ撮影、シネガンマなどによる “フィルムライク”に対するニーズが高まってきています。
ビルドアップされたM1スタジオのAK-HC3500
「かつてはフィルムで撮影していた時代劇のシリーズなどで、フィルムライクなトーンで撮りたいというニーズが高く、プログレッシブ撮影が多用されています。全編1080/30pによる撮影や、現代劇でも回想シーンのみをプログレッシブで撮影するケースなども増えており、プログレッシブ対応の有無がスタジオカメラ選択の一要素にもなってきています。しかも、時代劇には暗いシーンも多いですから、AK-HC3500が持つ黒の階調性の良さが非常に活きてくると思います。」(野々村氏)
■画の創り込みがしやすいカメラ
野々村氏はAK-HC3500について「一言で言えば、 “画の創り込みがしやすいカメラ”」と評しています。 「調整および番組中でのフォローもしやすいのは、元々の画がきれいだからでしょう。ミス調整しにくいカメラなので、狙った部分を探りやすい。つまり、画の創り込みがしやすいカメラであると言えます。」(野々村氏) そのほか、カメラヘッドの扱いやすさや低発熱(低消費電力)、オペレーション制御系の応答の速さなどについてもプロユースとして高い評価を受けています。
緑山スタジオシティには数多くのPanasonic製品が採用されている。AK-HC3500(写真上)、VEコントロール卓(中)D5VTR(下左)、CCU(下右)。
■自然界の“光”を忠実に視聴者に届ける
放送局には、報道機関として迅速・正確なニュースを視聴者に届けるだけでなく、自然界の光と音を忠実に視聴者に提供していく使命があります。その入口となるテレビカメラの開発は、自然界にある無限大に広がるダイナミックレンジを限られたレベルの電気信号に変換するという最も難しい領域であり、他の分野にはない技術やノウハウ、経験が必要です。 「特に、芸術性を伴うドラマや映画の制作においては、厳しい画質に対する要求があります。TBSテレビは今後もドラマを重視していきますし、“ドラマスタジオの緑山”の位置づけはますます高まっていきます。パナソニックには、これからもプロの領域で使用される道具としてのこだわりを持った“純制作用カメラ”を供給し続けていくことを期待しています」と立花氏は語っています。
■様々な機能もしっかりした基本性能があってこそ活きる
また、野々村氏は「AK-HC3500には様々な機能も搭載されていますが、それらはすべて、優れた色再現性をはじめ、しっかりした基本性能があるからこそ活かされているのだと思っています。」と評しています。