VARICAM 活用事例Vol.4

VARICAM 35の広いダイナミックレンジとデュアル・ネイティブISOが大きな威力を発揮

2015年10月4日からテレビ朝日系列で好評放送中の『仮面ライダーゴースト』および12月12日から全国ロードショー公開される映画『仮面ライダー×仮面ライダーゴースト&ドライブ超MOVIE大戦ジェネシス』は、VARICAM 35をメインシステムにVARICAM HS、AG-GH4Uを活用して撮影されている。パナソニックのシネマカメラによる平成仮面ライダーシリーズの収録は、第3作目「仮面ライダー龍騎」(2002年)でVARICAM(AJ-HDC27F)のHS撮影が評価されて以来、歴代シリーズの大多数で採用されてきた。

現在の『仮面ライダーゴースト』では、テレビ版および劇場版を並行して制作。セット・ロケを問わず1日に100カット以上を撮影し、VFX・編集作業が日々更新されていく繁雑な制作進行の中で、VARICAM 35の広いダイナミックレンジとデュアル・ネイティブISOが大きな威力を発揮するとともに、目的によって使い分けているVARICAM HS/AG-GH4Uを含め、全てをV-Log収録することで素材共有が図れるなど、ワークフローが大きく改善しているという。

技術を統括する八木明広氏((株)東映テレビ・プロダクション技術運営部部長)、撮影の倉田幸治氏、テクニカルマネージャーの林和哉氏((株)東映テレビ・プロダクション技術運営部技術コンダクター)、撮影技術・VEを担当する小森広美氏((株)アップサイド撮影部テクニカルマネージャー)および小山祐輔氏((株)アップサイド撮影技術部)、ポストプロダクションを担当する緩鹿秀隆氏(東映デジタルラボ(株)ポスプロ事業部第1グループ長兼第3グループ長)および高橋和寛氏(東映デジタルラボ(株)ポスプロ事業部ポスプログループ)に聞いた。

VARICAM 35をメインに、VARICAM HSとGH4を活用

『仮面ライダー ゴースト』の撮影は、VARICAM 35をメインカメラとして使用し、VFXシーンについては後処理を考慮して4K収録も実施している。また、VARICAM HSはハイスピード撮影(240コマまで=24p制作で10倍スローモーションが可能)を中心にサブカメラとして、アクションシーンなどでより躍動感のある撮影が求められるケースではAG-GH4Uを活用しているという。技術を統括する八木氏は「テレビ版、劇場版を並行して撮影・制作していますが、同一ロケーション・スタッフで行う1班の撮影期間は約2週間、テレビ版1話(30分)あたりの撮影は平均で6日程度。撮影を完了次第、合成チームとの連携を図りながらオフライン~カラーグレーディング~フィニッシングという行程を積み重ねていきます」とする。

厳しい撮影条件に、柔軟な表現力と操作性

スピードが要求される制作フローの中で、撮影システムの選定は“表現力”と“操作性”がポイントになったという。撮影の倉田氏は「前シリーズでは他社製のシネマカメラを使用していましたが、VARICAM 35はその表現力だけではなく、ENG的な撮り回しが可能なフィールドでの操作性、4Kでの撮影、VARICAM HSとの連携などが選定のポイントとなりました。仮面ライダーシリーズは1日に100カット以上を撮影しますが、まさに時間との勝負。快晴でも曇り空でもキャラクターとのマッチングがポイントであるだけでなく、撮影時刻が薄暗くなってきたとしても、場面の繋がりを考慮してデイシーンとして撮る必要があります。とくにVARICAM 35の広いダイナミックレンジと広い色域、デュアル・ネイティブISOがとても有効だと考えています」とする。

デュアル・ネイティブISOについて、テクニカルマネージャーの林氏は「センサー内にISO800とISO5000それぞれに独立したアナログ回路を搭載することで、撮影条件の変化に柔軟に対応できます。ISO5000設定時もISO800とほぼ同等のダイナミックレンジが可能で、明るさ/カラーの統一感が図れ、たいへん素晴らしい撮影環境が整った感覚です」としている。さらに、ISO5000というスペックは、とくにナイトシーンで威力を発揮したという。時間との勝負という撮影条件の中で、「幽霊をモチーフとした仮面ライダーゴーストのボディは黒、そこにオレンジの光のラインが配されています。ナイトシーンで背景が真っ暗でも粒子の粗い感じが無く、ボディの輪郭もハッキリと出ています。また、オレンジ色のラインとの明暗の差も違和感なく再現され、広い色域が確実に出せています。また、VFXシーンでは合成のヌケ、デジタルズームなど後処理で必要な場合、4K収録も活用しています」(倉田氏)

V-Logで素材共有、Log収録でクオリティの高いグレーディング

狙いやシーンに応じて使い分けているVARICAM 35、VARICAM HS、AG-GH4Uの撮影は、全て「V-Log」で収録し、素材共有とともに3DLUTを利用したカラーグレーディング作業で、ラティチュード豊かな表現力のある映像が得られているという。撮影技術・VEを担当する小森氏は「LiveGradeによるオンセットカラーグレーディングも考慮しましたが、撮影現場での自由度を優先して、グレーディングはフィニッシングで追い込むフローとしています。仕上げに負担をかけるかたちになりますが、その分割り切って撮影を進めることが可能です」とし、カラーグレーディングを担当する高橋氏は「全てのカットでグレーディングすることが基本となりますが、PabloRioではシームレスに編集・カラコレが行えるため、とくに大きな負担はありません。Logで収録していることで、広いダイナミックレンジをそのまま活かすことができます」と続ける。

また、小山氏は「VARICAM HSの強力なスローモーション演出は必須で、カメラの使い分けが必要になります」とした一方、八木氏は「VARICAM 35とGH4は1つの3DLUTで運用する一方、VARICAM HSはカメラの撮像構造の違いから、現状ではもう1種類の3DLUTを作成しています。それぞれの素材が数多く混在するという課題に対し当社では、撮影現場モニターおよびオフライン編集、VFX作業および本篇作業で共通3DLUTを2種類共有し、各セクションにおいて撮像機器ごとのデータに充てることで、柔軟に推進することが可能になりました。さらに、VFXの作業ではリニア色相域でコンポジットを実施して本編集への納品となるため、最終色彩調整での色情報を担保することを目的に、黒と白の肩を現場より緩やかに構築した3DLUT(現場運用LUTのリファイン版)で運用しています」と話す。なお、収録素材は高クオリティのまま各セクションで共有。ポストプロダクションを統括する緩鹿氏は「合成シーンは、テレビ版1話あたり100カット前後を有し、その合成作業は東映ラボ・テック運用管理のクラウドを利用して、高セキュリティかつ高速転送で、複数の拠点で分散して同時に素材共有可能な環境を構築しています」という。

フル4Kなど、さらに高画質でのワークフローについて八木氏は「撮影現場においてはVARICAM 35の撮影を含め、東映では8年前からデジタル4Kでの撮影運用を開始しています。また、現場ではフィルム時代からの経験から、2Kも4Kも撮影現場でのフローに大きな変わりはなく、より大容量データに対応した後処理の体制などの最終課題は残しつつも、東映製作では4Kコンテンツ完成品納品体制への対応は着実に構築しています」と語る。


 

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