VARICAM 活用事例Vol.6

抜群の「安定感」と「対応力」 VARICAM 35 は1つの「完成形

2016年11月から中華人民共和国で公開された映画『不离不弃~Two Man on the Road』はVARICAM 35を撮影に使用している。
同作品の脚本・監督はジャン・チンミン(蒋欽民)氏。中国湖南省生まれの同氏は北京電影学院で脚本を学び、1992年に来日。日本映画学校(現・日本映画大学)を卒業し、日本映画大学芸術学部映画学科映画学修士号を取得後、日中合作映画『戦場に咲く花』(2003年公開)で長編デビュー。以後『天上の恋人』(2006年公開)、『純愛』(2007年公開)、『東京に来たばかり』(2013年公開)などを手掛けており、現在は母国・中国でテレビと映画の両方で活躍している。
最新作『不离不弃』(読み:プリプチ)はジャン監督にとって初のコメディ映画となり、その撮影監督を務めたのが阪本善尚氏。今回、ジャン監督が映像のトーンとして参考にしていたのが、阪本氏が撮影監督を務め、初代VARICAMで撮った香港映画『MISSING ミッシング』(ツイ・ハーク監督/2008年公開)だったという。なお、阪本氏がVARICAM 35をメイン機材に採用するのは、日本映画『種まく旅人~夢のつぎ木~』(佐々部清監督)に次いで『不离不弃』が2作目となる。

ISO5000を多用 超高感度・低ノイズ撮影が可能なVARICAM 35ならでは

『不离不弃』は中国の広州、成都、青城山(中国・四川省都江堰市の景勝地で、道教の発祥地の1つとして知られる)で、延べ50日間にわたってオールロケを敢行した。阪本氏は「とにかくVARICAM 35の“安定感”は優れていました。トラブルがないことは撮影機材に求められる基本中の基本。特に、この作品は同じシークエンスを画角やアングルを変えながら、何度も繰り返し撮っていくスタイルだったため、安定性は重要でした。撮影中、現地レンタルから、モニター、バッテリー、ケーブル、三脚など様々な機材・備品を借りましたが、途中で故障が相次いだ。最後まで問題なく使えたのはVARICAM 35だけ。こうした事実が信頼感につながっていく」と評する。
撮影では、標準感度の1つであるISO5000を多用したという。「中国の市街地は眩しいくらいのLED光で溢れていますが、一転して室内はヨーロッパ調で暗い。そうした環境の中、テレビ畑で育ったスタッフが多かったこともあり、あまり複雑な照明設計はできないと判断しました。そこで、現場の光やランプをそのまま使う方針とし、ISO5000を多用しました。デュアルネイティブISO(800/5000)を搭載し、超高感度・低ノイズ撮影が可能なVARICAM 35だからこそできたことだと思っています」と阪本氏は話す。

4Kでコマ数を自在に可変 バリアブル・フレームレートの面目躍如

制作スタッフは映画とテレビの混在チームで編成され、撮影は阪本氏がAカメラ、現地のカメラマンがBカメラをそれぞれ担当するVARICAM 35×2台体制で行われた。「Aカメラは基本的にノーマルな24fpsで撮りましたが、コメディ映画ならではのアクションや演出効果として、Bカメラでは3倍で収録したり、5倍に上げたり…とコマ数を変えて撮るケースが多かった。その際、4Kで1~120fpsまでフレームレートを選択できるVARICAM 35の対応力は威力を発揮しました。VARICAMというネーミングの由来でもある“バリアブル・フレームレート”の面目躍如といったところですね。特に、中国では国家的な取り組みとして4Kが映画制作のスタンダードになっていることもあり、4Kのままコマ数を可変できるVARICAM 35の有用性に、現地スタッフはとても感心していました」と述懐する。
また、「テレビ畑のカメラマンは、モニターで露出等を決めるので、今回、AカメラとBカメラ両方のVARICAM 35に、フィルムのプロファイルを入れたモニターLUTを適用して臨みました。結果、VARICAM 35を初めて使ったBカメラの撮影クルーがモニター上で露出を決めても、メーターで計ったAカメラと半絞り分も狂っていませんでした。デジタルネイティブな世代やテレビ畑のスタッフにも使い勝手が良かったようです。この安定性はVARICAM 35の特筆すべきメリットであり、アドバンテージになりうる部分だと思っています」と続ける。

V-GamutとV-Logは作り手のチャレンジに応えてくれる
実践的なワークショップに期待

阪本善尚氏

阪本氏はDVCPRO時代からパナソニックの撮影システムを映画作りに活用しており、「初代VARICAMから考えても、VARICAM 35は豊富な機能、操作性、画作りのしやすさ…等々、格段に進歩しているのことを実感しています。もちろん、映画は作品ごと異なる世界観を創り上げるため、課題もその都度出てきますが、デジタル撮影が主流となる中、VARICAM 35は現時点における1つの 「完成形」といってもいいのでは。カメラマンは、作品の狙いに応じてあらゆる工夫をします。そうした試行錯誤は、カメラそのものにチカラがなければできません。その意味でも、広い色域を持つVARICAM 35の“V-Gamut”と広いダイナミックレンジを持つ“V-Log”は、作り手のチャレンジに応えてくれる能力がある」とする。
加えて、「『不离不弃』では、若い世代がVARICAM 35を使って、その特性や操作感を体感しました。そこで得た感触や知見、経験値等をもとに、次の新しい作品でVARICAM 35を選択する可能性が彼らの中に生まれたわけです。そのことによって、また別のカメラマンにVARICAM 35が“伝承”されていく。だからこそ、日本でも同じようにVARICAM 35に触れる機会を創出することが急務だと考えています。カメラは作品を撮ってこそ、その真価がわかります。単にスペックを訴求するのではなく、例えば…“弟分”であるVARICAM LTを入門機に位置付け、VARICAMシリーズが創り出す画のクオリティを実感してもらうような実践的なワークショップなど、パナソニックには正しい使い方やワークフローを広めていくための“場”を、積極的に展開して欲しい、と願っています」と語る。

 

  • この納入レポートのPDF
  • お問い合わせ