納入リポート  【有限会社 極楽映像社 様】

(有)極楽映像社は、米米CLUBの約4年半ぶりとなる全国ツアー「おせきはん」で、1月9日~10日に東京・渋谷区のNHKホールで行われたコンサート映像の撮影・収録に、パナソニック ポータブルレコーダー“POVCAM”を活用した。同社では音楽ライブをはじめ様々な撮影に“POVCAM”を活用してきたが、今回は2017年春に発売した新“POVCAM”を計15台使用。小型・軽量・フリースタイルの高い運用性を継承しながら、4K対応や大幅な画質向上、新たに搭載されたIPリモートコントロール機能が、多数の“POVCAM”を使用した収録における効率的な運用に大きく寄与したという。また、舞台の世界観を損なわぬよう、メディカル用途向けの「白い“POVCAM”」も併用した。なお、同コンサート映像の撮影・収録では、“POVCAM”や4Kカメラレコーダー「VARICAM 35」、コンパクトシネマカメラ「AU-EVA1」、プロフェッショナル4Kカムコーダー「AG-UX180」といったカメラのほか、マルチフォーマットライブスイッチャー「AV-HS450N」や放送業務用LCDモニター「BT-LH910G/1710」、IPリモートカメラコントローラー「AW-RP50」など、数多くのパナソニック製品を中心にシステム構築されたことも大きな特徴となった。

POVCAM

今回の米米CLUBコンサート収録では合計15台の新“POVCAM”が用意され、舞台上の各所に様々なスタイルで設置された

合計15台の新“POVCAM”を使用

極楽映像社は、2010年の横浜アリーナで行われた米米CLUBのライブで、舞台上の仕込みカメラとして使用して以来、音楽ライブの収録などで“POVCAM”を積極的に活用してきた。
代表取締役/撮影監督の野澤啓氏は「米米CLUBのライブ収録では、メンバーの数が多いことに加え、そのメンバーが舞台上を激しく動き回るので、舞台上に小型カメラを大量に仕込む必要があります。逆に言えば、米米CLUBのライブ収録は、“POVCAM”なくして成立しないかも知れません」と語る。
今回のコンサート収録では、2017年に発売された新“POVCAM”が計15台使用され、カメラヘッドをマイクスタンドに仕込んだり、舞台セットにグリップしたり、床に直接ベタ置きした雲台への搭載など、様々なスタイルで舞台上に設置された。
 一方、幅広い領域の音楽コンテンツの制作を手がけ、今回の映像ディレクターを担当した(株)ソニー・ミュージックレーベルズ ソニー・ミュージックレコーズ マーケティングルーム(映像担当)プロデューサーの大倉輝高氏は「今回の撮影設計のコンセプトは"いかに楽に沢山の映像を仕込めるか"。ライブの収録では、舞台上に何らかのカメラを仕込みますが、ケーブルがつながっていない小型アクションカムは“カメラ任せ”になってしまう一方、“POVCAM”はケーブルで接続されているため、自由に動かすことはできない反面、必要に応じてコントロールができるメリットがあります。スイッチャーに出力する映像としても十分な画質を有している“POVCAM”を使って、なるべく沢山の映像を撮りたいと考えました」としている。

極楽映像社
代表取締役

野澤 啓 氏

ソニー・ミュージックレーベルズ
プロデューサー

大倉輝高 氏

新“POVCAM”で撮影された映像は舞台上手にある撮影サブベース(写真左)に集められ、一部リモートコントロールによる演出を行った映像などとともに16分割のスプリッターに入力して、舞台下手にある撮影メインベースにIPネットワークを通じて伝送する。メインベースでは16分割ディスプレイに表示された画像を統合管理する。IPネットワークを介して各カメラの画像調整やリモートコントロール操作も可能(写真右)

IP対応で“POVCAM”の存在価値がさらに拡大

今回の収録では、新“POVCAM”の大きな特徴である“IPネットワーク対応”が大きな威力を発揮した。
新“POVCAM”には、IPストリーミング/ IPコントロールに対応するLAN端子を装備しており、ネットワークへの映像・音声ストリーミング配信、ファイル転送や外部からのコントロールが行える。
Webブラウザを介したパソコンやタブレット等からのアクセスや、IPコントローラーによる制御も可能で、統合したシステム運用が実現する。
同社では、事前準備として、それぞれの“POVCAM”の色や画質を統一させておくとともにIPアドレスを割り当て、当日は、控え室に設けた撮影ベースで全ての“POVCAM”を管理・調整できる環境を構築した。現場ではLAN接続された各カメラの映像を16分割のスプリッターに入力して、IPネットワークを通じて伝送。撮影ベースにあるモニター上に16分割で表示された映像とIPコントローラーを用いて、個々のカメラの映像を見ながらフォーカスやアイリス、ズームなどをリアルタイムにコントロールする。
野澤氏は「カメラを仕込むこと自体に相当な時間がかかります。今回は特に台数が多かったので、1台ずつ調整していくのは非常に大変ですし、舞台後方や高所などに設置したカメラはオペレーションが難しいので、IPネットワークによる集中コントロールは非常に役立ちました。音楽ライブの収録は“一発撮り”の緊張感がありますが、収録自体はレコーダーのSDメモリーカードで行い、IP経由で各カメラの微調整がリアルタイムにできる便利さを実感しました。また、以前はオートモードで撮影すると自動的に増感されて画質がザラつくこともありましたが、新“POVCAM”に搭載されたゲインリミットによってゲインを設定できるほか、急な光が入ってきてもIPコントロールで絞りを調整できます。約3時間のライブを舞台上に仕込んだカメラで何が撮れているのかを確認できるメリットはすごく大きい。新“POVCAM”のIP対応によって、確認できる範囲が広がったことで、"カメラ任せ"ではなく、自分の意志で創作できるようになり、“POVCAM”の存在価値がさらに大きくなったと思っています」としている。

白い“POVCAM”を併用、一部では4K/24p収録も

舞台の世界観を損なわないよう、医療用に特別設計された白い新“POVCAM”も多数用意された

今回の全国ツアー「おせきはん」では、舞台セットが赤と白に統一された世界観となっているため、医療用に特別設計された白い新“POVCAM”(AG-MDR25+AG-MDC20GJ)が多数使用されているのも大きな特徴となった。
さらに、舞台後方や高所に設置したカメラなど一部の新“POVCAM”では、4K/24p収録も行った。「動きが激しい被写体を捉えるカメラは、パンフォーカス気味にワイドで4K撮影しておき、後でトリミングすることでカバーすることにしました」(野澤氏)。

今回の収録では多数の新“POVCAM”に加え、VARICAM 35やAU-EVA1、AG-UX180等のパナソニック製カメラが使用された

パナソニックのMOSセンサー搭載カメラで統一

 

今回のコンサート収録では、新“POVCAM”×15台のほか、AG-UX180×6台、VARICAM 35×2台、AU-EVA1×1台を中心に合計28台のカメラを使用している。撮影素材はVARICAM 35ではexpressP2カード、それ以外のカメラはSDメモリーカードにそれぞれ収録していく一方、全てのカメラの映像は撮影サブベースに集約され、オプチカル8chの伝送セットを介して撮影ベースのスイッチャー「AV-HS450N」に伝送し、大倉氏がスイッチングした映像も別途収録している。
野澤氏は「音楽ライブの撮影は、最低限のクオリティを担保した上で、その時間の中で起きていることを事件的に切り取っていく要素が強いため、それぞれの見せ場をカッコ良く、タイミングよく撮れているかが重要です。今回の撮影では、新“POVCAM”の台数が圧倒的に多いため、全ての色の基準を“POVCAM”に合わせる必要があり、同じ色が出せるパナソニックのカメラを中心に撮影システムを構築しました。加えて、近年ではステージ上で多用される大型LEDディスプレイの赤や紫などで微妙な色の違いが生じるため、すべてMOSセンサー搭載カメラで統一しています」とする。

 

“POVCAM”はカメラマンのクリエイティビティを提案できるアイテム

極楽映像社では、このほかにも“POVCAM”のメリットを最大限有効に活用した撮影を行っている。
野澤氏は「カメラマンにとって、カメラは“絵筆”であるといえます。“POVCAM”は、カメラマンのクリエイティビティを提案できる手法として持っていたいアイテムの1つだと思っています。自分が提案したいクリエイティビティに対して、カメラ側がどのようにアクセスしてくれるのかを、常に楽しみにしています」と話している。

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